勤怠管理
公開 2020.04.30
更新 2026.07.29

年5日の有給休暇の取得の義務化!労務管理者のすべきこととおすすめの管理方法

2019年の施行から数年が経過し、「年5日の有給休暇取得義務」は今や企業にとって遵守して当然のルールとなりました。現在、労働基準監督署の調査においても、有給休暇管理簿の整備や取得実績のチェックは一段と厳格化されています。

しかし、複雑な「中途採用者の基準日管理」や「パートタイム労働者の比例付与」など、アナログな管理による計算ミスや取得漏れのリスクに頭を悩ませている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、有給休暇義務化の正確なルールを再確認するとともに、法違反を防ぎつつ管理工数を最小化するための「スマートな管理手法」を解説します。

まずはざっくり説明!有給休暇取得の義務化とは?

有給休暇取得の義務化とは、2019年4月1日より施行された働き方改革関連法の一環であり、労働者に最低でも年5日の有給取得を義務付けるという決まりのことです。

大企業から中小規模まで、企業の規模にかかわらず適用されます。有給休暇の買い取りを行っている企業も例外ではありません。

ただし、労働者が自発的に有給を取得するのを待つだけでは義務を果たしたことにはならないため注意が必要です。使用者は年5日の有給を取得していない労働者と話し合い、労働者が希望する日程の通りに有給を取得させる必要があります。

管理者側から有給を取得したい日を聴取するための行動を起こさなければならないという点が、働き方改革関連法の施行以前との大きな違いです。

違反した際の罰則

有給休暇の取得指定は、法律により企業に課せられた義務です。これに違反し、対象となる労働者に年5日の有給休暇を取得させなかった場合、企業は30万円以下の罰金に処せられます。

すでに施行直後の周知期間は終了しており、現在の労働基準監督署による定期監督では、「年次有給休暇管理簿」の備え付けや取得実績との照合が厳格にチェックされます。悪質な未取得や管理簿の未整備は、是正勧告にとどまらず、実際に罰則が適用されるリスクを孕んでいます。

なお、この罰金は「労働者1人あたり」に対して科されるため、対象者が100名であれば合計で最大3,000万円もの罰金となる可能性があります。企業はこうした大きな制裁を避けるべく、確実な取得に向けた体制整備を急がねばなりません。

「年5日」って?期間の数え方について

有給の付与日は労働者ごとに違うケースもあるため、年5日の有給取得を義務付けられても、どのように考えればよいのかわからないという人もいるでしょう。そこで、有給期間の数え方について詳しく説明します。

入社の半年後に有給を付与した場合

まず、有給休暇の取得義務が発生するのは、入社後半年が経過した労働者に有給を付与した場合です。

労働基準法により、入社後6カ月が経過しており、かつ全労働日の8割以上出勤している労働者には、10日の有給が付与されます。

この場合、有給が発生した日を起点として、1年間に付与しなければならない有給を計算しましょう。例えば、4月1日に入社した労働者には、10月1日時点で有給が発生します。そのため、翌年の9月30日までに、5日間の有給を取得しなければならないのです。

入社日に有給を付与した場合

入社時や分割での有給休暇の前倒し付与を行う企業では、付与日数の合計が10日に達した日を起点として、1年以内に5日の取得義務が生じます。

例えば、4月1日に入社し、その時点で5日、3カ月後の7月1日にさらに5日を付与する場合、翌年6月30日までに5日を取得させなければなりません。なお、付与日数が10日に達する前の取得分も、義務化の5日間から控除することが可能です。

ただし、全社一律の基準日設定などにより、管理期間が重なる「ダブルトラック」が発生すると管理は極めて複雑になります。2026年の実務においては、ミスを防ぐためにも自動計算やアラート機能を備えたシステムの活用が不可欠です。

フルタイム勤務でない労働者は対象?

有給休暇は、正社員や契約社員などのフルタイム労働者に限らず、パートタイム労働者にも付与されます。ここからは、フルタイムではない労働者の有給休暇義務について見ていきましょう。

所定労働日数が週3日・4日の労働者は対象

週の所定労働日数が少ないパート・アルバイトであっても、年10日以上の有給休暇が付与される場合には「年5日の確実な取得」が義務付けられます。

具体的には、直近1年間の出勤率が8割以上であることを前提として、週4日勤務(年間169~216日相当)なら入社後3年6カ月以上、週3日勤務(年間121~168日相当)なら入社後5年6カ月以上継続して勤務している労働者がこの対象となります。

週によって勤務日数が異なる場合は、年間の総労働日数から付与日数を判断しますが、原則として対象外となる週2日以下の労働者であっても、年度途中の契約変更等により付与日数が10日に達した場合は義務が発生するため注意が必要です。

所定労働日数が週2日以下の労働者は対象外

所定労働日数が週2日以下、年間120日以下の労働者の場合、有給休暇は最大でも年7日間しか付与されません。

年間の有給付与日数が10日に満たない場合は、有給休暇取得義務の対象にはならないので注意しましょう。

会社からの「時季指定」が不要な場合

使用者が時季を指定したうえで、労働者に有給を取得させることを「時季指定」といいます。

年5日の有給を取得していない労働者に対して、会社は時季指定をしなければなりません。ただし、取得時季は使用者の都合で決められるわけではなく、あらかじめ労働者の意見を聴取しておく必要があります。また、労働者の希望に沿った時季に有給を取得できるよう、意見を尊重するのも使用者の義務です。

なお、既に年間で5日間の有給を取得している労働者に対しては、時季指定を行う必要はありません。そのため、もともと有給休暇を取得しやすい風土作りができている会社にとっては、有給休暇取得義務が適用されても大きな影響はないと言えるでしょう。

多くの労働者が年5日は有給休暇を自発的に取得できるような環境を整えるのも、有給休暇取得義務を果たすための対策のひとつです。

会社側で管理しやすい時季指定の方法

有給休暇の取得義務化により、労働者ごとに異なる付与日や履行期日の管理が実務上の課題となっています。管理ミスを防ぐため、厚生労働省は「計画的な管理手法」を推奨しています。

特に2024年4月の法改正で「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が義務化されたことで、部署異動や職種変更を伴う従業員の有給休暇の管理(基準日の通算等)は複雑さを増しています。属人的な管理を脱し、組織全体で一元的に管理できる体制を整えることが急務です。

年次有給休暇取得計画表を作成

まずは労働者個人の有給休暇取得計画表を作成しましょう。ただし、必ずしも日付を特定する必要はありません。「6月中旬に2日取得予定」というように、大まかな予定を組んでもらうことで、確実に有給を取得できるでしょう。

この方法を使えば、労働者が希望日を申告しやすくなるだけではなく、企業側も誰がいつ休むのかを把握できるようになります。万が一、特定の時季に希望日が集中していたとしても事前にわかるため、取得時季の調整や管理もしやすくなるのです。

計画表は年度ごとに作成しても問題ありませんが、会社によっては年度の後半へ向かうほど状況が変わり、当初の予定通りに有給を取得するのが難しくなってしまうこともあるでしょう。そのような場合は、四半期ごとや月ごとなどの短い期間で計画表を作ることで、より柔軟な対応ができるようになります。

計画年休制度の導入

計画年休制度とは、企業側が前もって有給の取得日を割り振る制度です。この方法を活用すれば、閑散期などに事業部ごとやグループごとに交代で有給を取らせることができます。

さらに、休日の前後に有給を取得することにより、大型連休を与えることも可能です。なお、この方法を個人に適用すれば、結婚記念日や誕生日などの決まった日に取得を促し、計画的に有給の消化を促すという方法もとれるでしょう。

この制度は、企業が業務運営や労務管理をしやすくなるだけではなく、労働者も引け目を感じることなく有給を取得できるというメリットもあるのです。

ただし、計画年休制度を導入するには、就業規則に計画年休を取り入れる旨を定めたうえで、労使協定を締結しなければなりません。企業側の一存で、すぐに計画年休制度を実行できるわけではないため注意しましょう。

労務管理者がすべきことは以下

有給休暇取得の義務化の概要や対策について理解したら、実際に社内の制度や労務管理のシステムを整備しなければなりません。

ここからは、有給休暇取得の義務化へ対応するにあたり、管理者側がどのように動くべきかを具体的に紹介します。

年5日の有給を未消化の社員への対応

万が一、年5日の有給を消化できていない労働者がいた場合、管理者は有給を取得するよう声掛けを行うなどの対応をしなければなりません。

そのため、労働者の有給取得状況を常に把握できるような仕組み作りが求められます。例えば、有給休暇の取得率が低い会社なら、計画年休制度を取り入れることで、取得状況の確認や声掛けがしやすくなるでしょう。

一方、自発的に有給を取得する風土が根付いている会社であれば、労働者が希望日を自由に決められる個別指定方式を導入するのもひとつの方法です。

年次有給休暇管理簿の作成・保存

年次有給休暇管理簿は、労働者ごとの有給取得日や取得日数を把握するうえで非常に便利なツールです。

ただし、3年間の保存義務があります(※当分の間、労働基準法上の時効は5年、保存義務は3年とされています)。 紙での保存は管理コストや紛失リスクが高いため、現在は電帳法の電子保存要件に準じたクラウド管理が主流となっています。

書類を作成する際は、時季や取得日数、有給を付与する基準日を必ず明記しましょう。特に、四半期ごとや月ごとなど、期間を細かく設定する場合は保存する書類の量も増えるため、紛失したり破損したりすることがないよう慎重に管理を行う必要があります。

就業規則の変更や追記

計画年休制度などの新しい決まりを導入する場合は、就業規則に明記しなければなりません。就業規則において、休暇に関する事項は絶対的必要記載事項です。時季指定を導入する旨はもちろん、適用される労働者の範囲や、取得日の指定方法なども忘れずに明記しましょう。

また、労使協定の締結も必要です。労使協定とは、労働者の過半数により組織された労働組合か代表者とのあいだで締結する協定を指します。なお、就業規則の内容を変更した場合は所轄の労働基準監督署への届け出が必要ですが、労使協定締結の際に交わした書面については提出する義務はありません。

管理者側が労働者の有給休暇実態を常に把握・管理することが重要

有給休暇の残数管理や取得状況のリアルタイム把握には、クラウド型勤怠管理システムの導入が最適です。

rakumo キンタイ」のような先進的なツールを活用すれば、複雑な比例付与の計算からアラート通知、管理簿の自動生成までを一気通貫で行えます。

デジタル化によって、労務担当者は「計算」という事務作業から解放され、より本質的な「働きやすい職場づくり」という課題に注力できるようになります。正確なデータに基づいた適正な労働時間管理こそが、持続可能な企業成長を支える基盤となります。

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