社内の残業が減らない!残業が減らない理由と残業を減らすシステムの作り方
残業の多さは従業員の体力をだんだんと削っていく問題です。また、人件費もかかるので企業としては対策を練りたいところです。それなのに、いくら声がけしても残業が減らないのなら、企業のシステム自体を見直してみましょう。この記事では、一向に残業が減らない理由やどうすれば残業の少ないシステムを作れるのかを解説します。
なぜ社員は残業をしてしまうのか?
「残業をしないで」と呼びかけるだけでは、なかなか残業は減りません。なぜなら、多くの社員が理由あって残業をしているからです。まずは、残業の理由をまとめていきます。
仕事量が多い
まず、単に仕事が片づけられないだけの可能性があります。本人の能力が追いついていなかったり優先順位を間違えていたりして、思うように仕事を進められない状態です。一方、仕事の振り分けが間違っていることもありえます。たとえば、特定の個人に仕事が集中してしまっていては、定時までに片づけるのが難しくなってしまうでしょう。
また「終わりが見えない」のも問題です。何が行われば仕事が終わるのかが曖昧なので、いつまでも手を止められないケースです。真面目な人ほど自分から止められず、残業をしてしまいます。そして、クライアントからの連絡が遅いのも大きな理由です。定時を過ぎているのに仕事の追加依頼が来たとき、断りにくくて残業をしてしまう人は多いのです。
残業が評価される雰囲気がある
悪い傾向として「残業を評価する組織」が挙げられます。つまり、会社全体で「残業をする社員はがんばっている」という価値観が蔓延してしまっているケースです。このような組織だと、上司からの評価を得たいがために残業をする従業員が続出します。本人が「良いことをしている」との意識を持ってしまうので、改善しにくくなっていきます。
しかも、本当は残業をする必要がない人にまで影響を与えてしまうのが問題です。しっかり定時までに仕事が終わっているにもかかわらず、周囲が残業ばかりしているので帰りにくい空気感ができあがってしまうのです。仕方なく、周囲に合わせて無理やり残業をする人が増えていきます。それを咎める上司もいないため、悪循環が延々と続きます。
社員本人のスキルの問題
本人の業務スキルも残業と密接に結びついています。適切な仕事量を割り振られているにもかかわらず残業をしてしまうのは、働き方に問題を抱えているからだと言えるでしょう。たとえば、非効率的な手順で仕事をしているとスピードは上がりません。また、タイムマネジメントスキルが足りなかったり、そもそも意識していなかったりすると残業は増えていきます。
ただ、こうしたケースでは企業側の責任もゼロではありません。適材適所の人員配置がなされていないと、従業員は慣れない業務に苦しみ続けます。苦手分野を無理やりやらされているのでモチベーションも上がりません。その結果、作業効率の低いまま、残業が常態化してしまうのです。
残業代が欲しい
いわゆる「生活型残業」を行っている従業員もいます。彼らは定時内に仕事を終わらせられるだけの能力は有しています。ただ、本当に定時で返ってしまったら残業代が発生しないので、あえて会社に残り仕事を続けるのです。ただ、手がけるべき仕事がない場合も多いので、会社にいるだけの状態も少なくありません。結局、残業代目当ての社員同士で雑談をするなどして、時間をつぶしていることもありえます。
ただ、彼らの行為が悪いとも断定できません。そもそもの基本給が少なくて生活ができていない可能性もあるからです。彼らは残業代を想定して、なんとか生活をやりくりしています。無理やり残業を止めさせてしまうと、今度は生活費が足りなくなるという問題も生じるでしょう。
そもそも残業は社員個人の判断でやってはいけない
ここまで、従業員が残業をする理由を挙げてきました。ただ、大前提として残業とは個人の裁量で行うものではありません。以下、残業が発生するときの正しい流れを説明します。
残業には業務命令が必要
本来的に残業は企業側に命令権があります。上司が部下の仕事を見て、必要があると考えたときに命令を下します。命じられた部下は原則的に断れません。ただ、理由のない命令は許されず、残業の根拠を示す必要があります。また、企業は残業をした社員に対して正当な時間外手当を支給しなくてはなりません。
逆を言えば、上司からの命令がない限り、部下に残業をする義務はないのです。多くの企業で発生している問題は、部下が自己判断で残業をするかどうか決めてしまっていることです。その結果、残業代目当ての従業員が好きなだけ残業をしてしまうなどの事例につながっています。こうした習慣が当たり前になってしまうと、企業と従業員、双方にとって負担が大きくなります。
無断で残業した場合の残業代を払う必要は?
そもそも、上司に指示されたわけではない「無断残業」は正式な時間外労働に含まれません。そのため、企業からすれば残業代を支払う必要がない労働なのです。特に、上司は帰るよう促していたにもかかわらず、部下が無理に居残っていた場合は労働時間として認められないルールです。残業を減らすには、この点を全従業員で共有しておくことが大切です。
ただし、上司からの黙示的指示があった場合、残業代が発生することもあります。たとえば、本人は帰りたがっていても「みんな働いているのに帰るのか」などの遠回しな圧力がかかっていたとすれば、残業の指示とみなされます。立場の強い人間の言動は直接的でなくても、残業の強制になってしまうことがありえるのです。
残業を黙認し続けると会社が大変!?
従業員の残業が当たり前になった企業は、早急に対策を練らなくてはなりません。無策のまま経営を続けていると、企業がペナルティを受けることがあります。以下、残業の黙認がなぜいけないのかを解説していきます。
時間外労働の上限規制とは
残業についてのルールを定めた「時間外労働の上限規制」というものがあります。大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用となります。この規制により、残業の上限は「1年で720時間以内、1カ月で100時間未満、2~6カ月平均で80時間以内」に変わりました。これまで従業員に労働基準法を超える残業をさせるための36協定はあったものの、よりルールが厳格化された形です。
経営者は時間外労働の上限規制を知っておかないと、従業員に違法な時間外労働を強いることになりかねません。もしも不正が発覚して従業員に告発されたとき、未払いだった残業代をまとめて請求される事態もありえます。そうならないよう、残業時間の上限には常に敏感でいましょう。
違法した場合はどうなる?
もしも上限規制を無視して従業員を働かせていると、罰が科せられることもあります。事業主は「「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処される可能性も出てきます。ただ、それ以上に痛手となるのは社会的信用の失墜です。労務問題は世間の関心が集まりやすいテーマであり、不当な労働を強いる企業への風当たりは強くなります。いわゆる「ブラック企業」はネットユーザーたちのあいだで共有されており、一度ついたイメージはなかなか払しょくできません。
従業員に優しくない会社と評価された時点で、顧客や取引先が離れていくこともありえます。また、就職活動でも積極的に応募したい人が減ります。有能な人材が入社しなくなるので、長期的に見て企業力が先細っていくでしょう。
残業を減らすために人事労務の担当者ができること
具体的な施策がないと、常態化した残業は減りません。健全な労働環境を整えられるかは人事労務担当者の手腕にかかっています。この段落では、人事労務担当者にできる取り組みを2つ紹介します。
ノー残業デーの導入
即効性のある対策として「ノー残業デー」があります。週に1日を目安として、残業を禁止する日を設定してしまう方法です。その日は定時を迎えたら強制的に会社を出なくてはなりません。実際にノー残業デーを始めてみると、従業員は「定時で終わらせなくては」というプレッシャーから自分の仕事を見直すようになります。就業時間中の無駄もなくなるので、かえって効率が良くなることも珍しくありません。そして、ノー残業デー以外の働き方も改善されていきます。
ただし、定時で帰っても持ち帰り業務が多くなったり、別の日が忙しくなったりするのは避けたいところです。人事労務担当者が中心となって「時間内に仕事を終わらせる重要性」を浸透させましょう。
残業申請のルール化と徹底
次に「残業申請のルール化」です。そもそも残業は上司からの命令、許可があってこそ行う労働です。自己判断を排除し、申請が承認されたときのみ残業をするルールを徹底していきます。その際、残業を認める基準が明確になっていれば、よりルールは共有されやすくなります。
人事労務担当者は、残業の申請書を用意しておきましょう。この書類は残業届とも呼びます。日時や理由を書き込んだうえで、上司の承認を得るまでのプロセスをつくっておけば無駄な残業は減っていきます。それでも申請書を出さないサービス残業が発生するなら、労働条件そのものに問題があると見るべきです。仕事の割り当て、適性などを考え直し、様子を見ながら適材適所の人事を進めましょう。
rakumo キンタイなら残業申請ルールを徹底しやすい
残業を申請制にすることで、従業員の無駄な時間外労働は減らせます。しかし、申請が社員の手間になってしまえば、いつの間にかルールは廃れかねません。逆にサービス残業が今までより増える可能性もあるので、手軽な申請のシステムは必須です。「rakumo キンタイ」は「時間外労働申請」というメニューで、時間と理由を求められます。また、管理者が残業の多い従業員をチェックすることも可能です。苦手な業務を押しつけられていたり、残業代目当てに居残っていたりする社員を見極められます。違法な残業を防げるだけでなく、従業員の労働環境を健全に保つためにも活用できるシステムです。
人事労務の担当者は残業を減らす仕組みづくりを
たとえ従業員が自分の意思で残業をしていたとしても、労働時間の上限規制を超えると違法になります。残業の多さは企業側の管理体制の問題として真剣に解決策を探らなくてはなりません。残業を減らすには従業員への教育はもちろん、的確なシステム作りが肝心です。人事労務担当者が中心となり、無駄な残業のない組織へと変えていきましょう。