勤怠管理
公開 2020.04.30

法定休日と所定休日の違いは?賃金が変わってくるので要確認

法定休日と法定外の所定休日は似ているようで異なるものです。言葉の意味の違いもありますが、それだけでなく従業員に支払う賃金にも影響します。だからこそ、確実に理解して各従業員の勤怠状況を正しく把握したうえで処理しなければなりません。この記事では「法定休日」と「所定休日」の違いと、それぞれの処理の仕方や割増賃金について説明します。

法定休日と所定休日の違い

法定休日と所定休日はどちらも休日のため、同じようなものと思っている人も多いでしょう。しかし、労働基準法では、その2つの休日を明確に区別する必要があります。以下に、法定休日と所定休日の違いについて説明します。

法定休日

労働基準法は、労働者を守るための最低限の基準を定めた法律と解釈されることが多いですが、企業の労働者を守ることにより企業も守られているのだと理解しなければなりません。労働基準法では、企業が雇用する従業員に対し、少なくとも1週間に1日は休日を与えなくてはならないと定められています。変形休日制の場合は、4週間に4日以上の休日を与えなければなりません。その場合は、いつからの4週間とするのか起算日を明らかにする必要があります。これらの労働基準法によって従業員が休む権利を与えられた休日のことを「法定休日」といいます。

所定休日(法定外休日)

労働基準法で定めた法定休日とは別に、企業が定めた休日を「所定休日」または「法定外休日」といいます。たとえば、週休2日制の企業の場合、週に2日ある休日のうちの1日は法定休日となり、もう1日が所定休日となります。そもそも労働基準法では、企業は原則として1日に8時間、1週間で40時間を超えて従業員を働かせてはならないと定められているのです。会社の1日の就業時間が8時間の場合、5日の勤務で40時間に達します。40時間が週に労働できる上限の時間ですので、会社はこれ以上の労働を従業員に強いることはできません。そのため、法定休日以外に会社が定める所定休日を設けて完全週休2日制としている企業が多いのです。

完全週休2日制を採用する企業で多いのが、日曜日を法定休日とし、土曜日を企業の所定休日とするようなケースです。土曜日と日曜日の2日とも休日にするのだから、別に法定休日と所定休日をはっきり分けなくても問題なさそうに思えますが、実はそうではありません。法定休日や所定休日は、企業が独自に決めることができます。土日の連続した2日間を休日としても構いませんし、週のうちの平日の2日を休日としても良いのです。ただし、どちらを法定休日とし、どちらを所定休日とするかは、企業の就業規則や賃金規定などであらかじめ明確に定めておく必要があります。

なぜなら、休日労働における割増賃金の計算方法が異なってくるからです。それが元で企業と従業員だけでなく、労働基準監督署まで巻き込むトラブルにならないとも限りません。企業の労務管理や給与計算担当者は、法定休日と所定休日の違いを知ったうえで従業員の勤怠を正しく管理し、休日出勤における割増賃金を正しく計算して支給しなければならないのです。

休日出勤した場合は割増賃金になるのか?

ここでは、労働基準法で定められた法定休日と、会社が定めた所定休日に休日出勤した場合の賃金について説明します。

法定休日に出勤したら35%以上の割増賃金

労働基準法では、法定休日に出勤した場合の割増賃金についての規定を設けています。法定休日の労働に対する割増賃金の算出方法は、通常の賃金の35%以上の割増賃金を上乗せして支払わなくてはなりません。つまり、1日あたりの賃金が1万円だったとして、1万3500円以上を休日労働の賃金として支払う義務があります。また、休日労働が深夜にまで及んだ場合、さらなる割増加算が発生することに注意が必要です。深夜とは、午後10時から翌日午前5時までの時間帯を指します。万一、午後10時を少しでも過ぎれば、休日労働の割増だけでなく、深夜割増も重複して支払わなければなりません。

法定休日なら、法定労働時間の基準外ということになり、時間外労働という概念そのものがありません。よって、時間外手当や残業手当といった割増賃金は発生しませんが、深夜業に対する割増として25%以上の割増賃金が発生します。つまり、法定休日に深夜業をした場合、休日労働として35%、深夜労働として25%、合計して60%以上の割増賃金を支払うことになるのです。この場合の割増率は6割を超えるわけですから、人件費に大きく影響する数字と言えます。

所定休日の出勤でも割増賃金が必要なことも

会社が定めた所定休日に出勤した場合は、法律で定められた休日にはあたらないため、従業員に対して休日労働の割増賃金を支払う必要は基本的にはありません。ただし、ここには労働基準法の法定労働時間が大きく関わってくるのです。前述した通り、1日8時間かつ1週間に40時間までが法定労働時間と定められています。所定休日の1日の労働時間が8時間を超えた場合、あるいは所定休日の労働時間を含めた週の合計が40時間を超えている場合は、時間外割増の対象となります。この場合は、40時間を超えた労働時間分に対して、法定時間外労働として25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

たとえば、1日8時間の労働を月曜日から金曜日まで行い、所定休日である土曜日も出勤して8時間の労働を行い、法定休日の日曜日は休んだというケースで考えてみましょう。月曜日から金曜日までで既に40時間働いていますから、所定休日の土曜日の出勤に対しては、25%以上の時間外労働の割増賃金が必要です。では、1日の労働時間が8時間未満の場合はどうでしょうか。仮に、勤務日が月曜日から土曜日で法定休日が日曜日、就業時間が6時間40分の会社があったとします。この場合、1週間の労働時間はちょうど40時間です。これなら、週休2日制ではなく、法定休日の1日だけで、会社の所定休日がなくても問題にはなりません。

ちなみに休日と休暇の違いは?

会社法や労働基準法などの用語は似たような言葉がいくつもあるため、一つひとつの語句に対して正しい意味を知る必要があります。たとえば「休日」と「休暇」にしてもそうです。両者とも同じような意味に感じられ、どちらの言葉を使っても大差ないと考えている人もいるのではないでしょうか。従業員にしてみれば、どちらも会社が休みになる日なので、特に違いがわからなくても問題になることはないでしょう。しかし、厳密には明確な違いがあるのです。休日とは労働する義務を一切負わない日であり、休暇は労働義務がある日に労働が免除された日という意味です。同じ休みではあっても、意味合いとしては大きな違いがあることがわかりますね。

振替休日と代休の違いと割増賃金

さらに知っておきたいこととして、振替休日と代休の違いがあります。それぞれの言葉の意味や割増賃金についても、正しく理解する必要があるでしょう。

振替休日とは?割増賃金は基本的になし

ここで言う振替休日は、暦上で日曜日と祝祭日が重なった際の翌日の振替休日のことではありません。会社内で使う「振替休日」は、休日出勤した場合の振替として、本来なら出勤日であるはずの日と交換することを指します。つまり、前もって休日と労働日を交換して、本来の休日を労働日とし、ほかの労働日を休日と決めておいたものに対して「振替休日」と呼ぶのです。このように、あらかじめ決めておいた際は、休日労働の扱いにはなりません。したがって、休日の割増賃金の支払い義務はないのです。

例外として、週をまたいで休日を振り替えた場合、当該の週の法定労働時間が40時間を超えているときは25%以上の割増賃金を支払う必要があります。会社と従業員との認識のズレが原因で、休日割増手当がもらえると思っていたら当てが外れたとしてトラブルになる場合もあるようです。就業規則や賃金規定に振替休日の規定を明文化し、申告方法や振替期限の設定などを盛り込み、わかりやすく記載しておく必要があるでしょう。

代休とは?割増賃金は発生!

代休も振替休日と混同して使われやすい言葉です。代休とは、休日出勤をしたあとに、その代償として与えられる休日のことを指します。つまり、あらかじめ休日と労働日を交換していない場合に、ある特定の労働日を休みの日に充てることを「代休」と呼びます。従業員は休日に労働しているわけですから、35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。こちらも、誤解のないように就業規則へ記載して会社と従業員の認識を一致させておくことが大切です。

時間外労働や休日出勤を命じるなら「36協定」の締結は必須

そもそも、会社が法定労働時間を超えて従業員に労働を命じる場合は「36協定の締結」と「労働基準監督署長への届出」が必要です。「36(サブロク)協定」とは「労働基準法第36条に基づく労使協定」を略したものです。法定労働時間を超えて従業員に働いてもらう場合は、労働者の代表または労働組合とのあいだで書面により36協定を適正に締結し、労働基準監督署長へ届け出るとともに、労働者に周知しなければなりません。これらの手続きが正しく行われずに時間外労働や休日出勤を命じた場合は労働基準法違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

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同じ「休日」でも賃金が変わる!労務管理は注意

以上のように、同じ「休日」であっても、それぞれの性質を区別して理解していなければ賃金に関するトラブルを起こす可能性があります。労務管理の担当者は、休日をしっかり区別して理解し、適切に処理をしなければなりません。しかし、一人ひとりの従業員の勤怠を管理して正しく休日の判別を行うことはかなり困難です。労働基準法に違反することになるかもしれないプレッシャーも感じるでしょう。適正に個人の勤怠状況を管理するなら、労務管理に特化したツールを使うのも効果的です。

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あやふやになると後からトラブルに!休日の性質はしっかり理解

従業員にしてみれば、法定休日でも所定休日でも同じ休みには変わりありません。しかし、管理する側に正しい知識がないと、会社の管理体制を疑われることになるうえに労働基準法違反となる危険性をも秘めています。「法定休日」と「所定休日(法定外休日)」の言葉の意味と違いを正しく理解し、割増賃金に正しく反映させ、正確な給与計算ができる仕組みがつくれるよう労務管理の体制を整えましょう。

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