勤怠管理
公開 2020.04.30

ブラック企業と見なされないために!企業ができるブラック企業対策

労務や法令に詳しい従業員がいない企業の場合、どうすれば社会や労働基準監督署からブラック企業と見なされずに健全に労務管理ができるのか、よくわからないことも多いのではないでしょうか。しかし、従業員一人ひとりの労働時間や有給休暇の取得状況などに応じて適切な処遇が必要です。そこで、ブラック企業とならないため、労働基準法に則した適切な労務管理のポイントを以下に紹介します。

ブラック企業と認識されたらどうなる?

ブラック企業の疑いがあるとの情報があれば、まずは労働基準監督署から立入調査で指導があり、法的に問題がある場合は罰則を受けることもあります。ブラック企業は、長時間労働やパワーハラスメントなどが常態化し、労働者を肉体的にも精神的にも追い込んでいきます。貴重な戦力となる社員の使い潰しが社会問題にもなり、一度でもブラック企業と認定されてしまえば、社会からの風当たりも相当に厳しいと覚悟しなければなりません。現代はSNSや掲示板、ブログなどで個人が自由に情報発信できる時代です。会社の内部事情をレビューした就職情報サイトも乱立しています。

インターネット上でブラック企業との情報が出回れば、新卒や中途採用も厳しくなり、社員の離職、取引先との関係悪化、企業イメージ悪化による利益減少など風評被害で数々のダメージを受けることになります。ブラック企業との烙印を押されてしまえば、信用を回復するのは困難です。そのような危険な企業と認識されないように、正しい労務管理を行う必要があります。

ブラック企業と言われないためにすべきこと

ブラック企業の定義は定かではありませんが、問題になりやすい内容に過重労働が挙げられます。労働基準法が改正され、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から時間外労働の上限を1カ月あたり45時間、1年間では360時間と決められました。それにもかかわらず、実態はサービス残業を強制されたり、正しい割増賃金が支払われていなかったりする企業もあるようです。長時間労働を抑制して正しい割増賃金を支払うのはもちろんですが、長時間労働をせざるを得ない現状を把握し、根本的な解決策を講じなければなりません。単純に人手が足りないのか、業務遂行上何らかの障害があるのかなど、問題を浮き彫りにして企業全体で問題解決に真摯に向き合う必要があるでしょう。

まずは、現状の社員の業務や労働時間の実態を見える化して管理し、正しく把握しなければ始まりません。違法な長時間労働があれば止めさせる必要があります。時間外労働に対する割増賃金も、深夜労働、休日出勤などのケースに応じて、正しい知識を持って確実に支払わなければなりません。大幅な業務改善も大切ですが、まずは喫緊の課題としてこれらのことから見直すべきでしょう。

従業員の労働時間管理

それではまず、従業員の労働時間を把握する際のルールなどについて確認しましょう。

労働時間を正確に把握・記録する

労働基準法から派生した法律に労働安全衛生法があります。これは、労働者の安全と健康を確保すること、快適な職場環境の形成と保全を目的としています。働き方改革により労働安全衛生法が見直され、2019年4月の法改正により、従業員の労働時間を正確に把握して記録することが義務付けられました。中小企業においては、2020年4月1日から適用されます。法改正前は、企業からの指示または個人の判断で就業時間の不正申告によるサービス残業などが横行していました。その結果、時間外手当の未払いや過重労働による精神や身体の不調や過労死などが発生するに至ったのです。

しかし、勤怠の正しい管理基準が曖昧で、正しい労働時間の把握ができず証拠不十分であったことから、企業と従業員や遺族とのあいだでトラブルに発展してしまうケースもありました。法改正後は、管理職や裁量労働制、非正規雇用を含むすべての従業員を対象として、労働時間の正しい管理が義務付けられたのです。労働時間はタイムカード、ICカードなどの「客観的な記録方法」によって、始業と終業時間を把握・記録されなければならないと定められました。これらの労働時間を記録した書類は、労働基準法第109条で3年間保管する必要があることと決められています。

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労働時間が規制を超えないようにする

まず、労働基準法では従業員の労働時間の上限が決まっています。原則として1日8時間、週40時間を超えて働かせてはならないと定められているのです。つまり、このままではフルタイム勤務の従業員は残業をさせられません。しかし、部署によっては、月末や締日前など一時的に忙しくなるときがあります。1日で終わる場合もあれば、数日続く場合もあるでしょう。そのときだけのために人員を増やすこともできませんよね。そのようなときは残業して業務に当たらざるを得ない状況になります。

そこで、決められた労働時間の上限を超えて残業する場合は、労働基準監督署に許可を取ることで可能になります。36(サブロク)協定という協定書を、従業員と使用者のあいだで締結し、管轄の労働基準監督署長に提出すします。そうすることで、1カ月につき上限45時間の制限付きで残業させることができるのです。ただし、臨時的に特別の事情がある場合に限り、1カ月に45時間、年360時間を超えて残業させる必要がある場合は、さらに協定する事項を追加することで認めてもらえます。限度時間を超えることができるのは年6回以内とし、1カ月の残業時間および休日出勤の合計時間数が100時間未満でなければなりません。

また、1年の残業時間の合計は720時間以内になるよう厳守する必要があります。これらの届出を行わず残業させた場合や、36協定で決めた上限の時間を守らなかった場合は、労働基準法第32条違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられます。

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残業の割増賃金について

従業員が残業や深夜労働、休日出勤などをした場合、法定の割増率に基づき、正しい割増賃金を支払わなければなりません。それぞれ、計算間違いをするなどして時間外労働の割増賃金を十分に支払っていなければ、ブラック企業と認定されてしまうことがあるため気をつけなければなりません。

法定外労働時間には25%の割増賃金!深夜になるとさらに上乗せ

1日8時間、1週40時間を超えての労働は法定外となります。その上限を超えて働いた場合は、時間外労働として基本賃金の25%を加算した割増賃金を支払う必要があります。つまり、法定労働時間を超えた時間に対して、基本賃金×1.25倍の時間外手当を支払わなければなりません。厳密には、労働基準法では割増率を「25%以上」と定めています。また、22時から翌朝5時までのあいだに深夜労働を行った場合は、さらに「25%以上」の割増を上乗せする必要があります。つまり、深夜残業を行った従業員に対しては、時間外労働と深夜労働の割増となるため、基本賃金×1.5倍以上の時間外手当を支払うことになるのです。

法定休日労働は35%の割増賃金

法定休日とは、労働基準法で定められた休日のことです。労働基準法では「毎週少なくとも1回の休日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」と規定されています。この規定により定められた休日を法定休日といい、週休2日制の企業では、法定休日と企業が指定する休日を分けていることがほとんどです。この、法定休日に労働を行うことは休日出勤となり、割増賃金が発生します。労働基準法で定める割増率は「35%以上」となっています。つまり、基本賃金×1.35倍以上の休日労働手当を支払わなければなりません。ちなみに、深夜労働が重なればさらに25%の付加が必要です。その場合は、基本賃金×1.6倍となることに注意が必要です。

従業員に有給を確実に取得してもらう

従業員に有給休暇を取得させることも義務ですので、各従業員の有給休暇の取得状況を把握し、取得を促す必要があります。

年5日の有給取得の義務化

2019年4月の法改正で、すべての企業で年次有給休暇が10日以上付与される従業員に対して、年5日の有給を取得させることが義務付けられています。これは、せっかくの有給休暇がありながら、多忙な現場での周囲への気兼ねや遠慮などで、有給が取得しにくい状況を鑑みての措置です。有給を年5日取得していない労働者に対し、希望日を聞き、その意思を尊重して会社側が取得時季を指定し、有給を取得させることとしています。ただし、既に5日以上の有給休暇を取得済みの従業員に対しては時期指定をすることはできません。

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有給消化の仕組みを作ると楽

有給休暇の取得については、各従業員一人ひとりの状況を正しく管理して聞き取り調査をし、個別に取得を促すのは容易なことではありません。それらの声掛けが難しければ、従業員に「年次有給休暇取得計画表」を作成してもらい、計画的に取得してもらう方法が有効です。あらかじめ決めておけば、スムーズに有給休暇を取得しやすい環境ができあがるため、気兼ねなく休むことができます。計画的付与制度を活用した年次有給休暇は、5日取得義務化の日数にカウントされます。また、事業部ごとに閑散期などを利用して一斉に長期休暇にすることも可能です。

煩雑な労務管理には勤怠管理システムがおすすめ

ここまでブラック企業にならないための労務管理について説明してきましたが、以上の労務管理を手動で行うとなれば、かなり煩雑な業務になります。間違いなくこなすためには、勤怠管理システムに任せることも検討してみてはいかがでしょうか。ここでは、おすすめの勤怠管理システム「rakumo キンタイ」について説明します。

働きすぎを防止する

rakumo キンタイを使えば、働きすぎの兆候を事前に察知することができます。働きすぎを防止するためにあらかじめ時間外労働時間の設定をすることで、決められた時間以上の労働時間を超過する前にアラートで知らせてくれる機能が備わっています。

労働時間を見える化する

各従業員の出勤簿では、実労働日数や時間、法定時間内労働、法定時間外労働、深夜労働や休日などの勤怠に関する情報を一元管理できます。また、有給休暇の残日数や取得状況などもひと目で確認できるため、すべての項目の「見える化」が可能です。時間外労働が多い従業員についても把握しやすくなります。

法定時間外労働を見分けられる

法定時間外労働については、時間の上限を守ることとともに、正確な割増賃金の計算も必要です。rakumo キンタイなら、法廷内や法定外の時間外労働時間、割増率の異なる深夜労働や法定休日勤務なども正しく管理できます。個人別の集計が簡単に行えるため、給与計算の間違いが起こりません。また、有給休暇の取得率や残日数なども一目瞭然ですので、スムーズな労務管理が可能です。

ブラック企業と見なされないために労務管理は正確に

度重なる法改正のもと、その都度正しく従業員の労務管理を行うのは大変ですよね。労働時間を法定時間内・外で区別する必要があったり、従業員一人ひとりの有給取得状況を管理しなければならなくなったりと、労務管理は複雑になってきています。しかし、ブラック企業と呼ばれないために、かつ従業員が健康で働くために、正確な労務管理が急務です。勤怠管理システムを運用すれば、効率的で正確な労務管理が可能になるでしょう。

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