フレックス導入にあたってコアタイムはどう設定すべき?労働時間の管理は?
業務に柔軟性を持たせるために、フレックスタイム制度の導入を検討している企業は多いかもしれません。しかし、導入にあたってコアタイムをどう設定すべきか頭を悩ませる人事労務担当者は多いのではないでしょうか。そもそも、コアタイムは必要なのか、どのような意義があるのか考えてみる必要があります。この記事では、コアタイムの意義やフレックスタイム制度を運用する際の労務管理方法などについて紹介していきます。
フレックスタイム制度とは
フレックスタイム制度の導入を検討する前に、そもそも自社の業務に合っているのかまず考えてみる必要があります。そのためには、フレックスタイム制度とはどのようなものか改めて理解しておいたほうがいいでしょう。ここでは、フレックスタイム制度の意味と、どのような業界に導入されているのか紹介していきます。
フレックスタイム制度とは社員が勤務時間を柔軟に選べる制度
フレックスタイム制度とは、社員自身が出社時間と退社時間を自由に選ぶことができる制度のことで「フレックス制度」とも呼ばれています。1987年の労働基準法改正に伴い、翌年の1988年から導入されるようになりました。通常、同じ業務であれば就業規則などで社員全員が同じ就業時間に決められているのが一般的です。しかし、フレックスタイム制度の場合は同じ業務や部署内であっても、社員一人ひとりが自分の予定や業務の進捗状況に応じて就業時間を決められるという特徴を持っています。ただし、出退勤時間については柔軟な選択が許されるものの、労働時間については8時間を基準にしている企業が多い傾向があります。
広く導入されている業界
フレックスタイム制度と似た言葉で、変形労働時間制度というものがあります。変形労働時間制度は、一定の期間を単位として労働時間を調整することで、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働者を労働させることができる制度です。例えば、繁忙期には一日9時間、閑散期には一日7時間働くという調整が年・月・週単位で設定でき、結果として総労働時間が短縮されることを目的としています。
厚生労働省が2018年にまとめた「平成30年就労条件総合調査の概況」によれば、変形労働時間制度を導入している企業は、全体のなかで60.2%を占めています。変形労働時間制度のなかでフレックスタイム制度を採用している業界は、わずか5.6%と低いものの、そのなかで導入している業界の上位は「情報通信業」「学術研究、専門・技術サービス業」そして「複合サービス業」です。最も導入の割合が高いのは「情報通信業」の25.3%で、次は「学術研究、専門・技術サービス業」の13.9%、次に「複合サービス業」の12.3%と続きます。
これに対してフレックスタイム制度の導入があまり進んでいないのは、医療系や教育関連、建設業に飲食サービス業、宿泊業です。最も導入されていないのは「医療、福祉」でわずか1.7%にとどまっています。次は「教育、学習支援業」で2%、その次が「建設業」の2.1%です。ただし、これらの業種はどれも就業時間が固定されているというわけではありません。変形労働時間制度自体は高い割合で導入されており、フレックスタイム制度の導入は少ないというだけです。
フレックスタイム制度のメリットと注意点
フレックスタイム制度のメリットは、少しだけ出勤時間をずらすことで社員が抱えている問題を回避できるという点にあります。たとえば、1時間ずらすことで満員電車を避け、ゆったりと座って通勤することも可能です。子育てをしている社員の場合なら、1時間早く退社できれば、子どものお迎えも余裕を持って向かうことができます。スーパーマーケットでの買い出しなど、帰宅前に済ませておきたい用事にも十分時間をとることができるでしょう。ほかにも、家族や友人との時間を捻出しやすく、プライベートを充実させることもできます。
業務の面で考えても、さまざまなメリットがあります。たとえば、客先への訪問や取引先との打ち合わせの際、相手の都合に合わせて業務時間外に働くという問題も解消できるでしょう。社員一人ひとりの業務状況や生活スタイルに応じて自由に出勤時間や退社時間を決めることができれば、そのぶんだけ時間に余裕ができて効率アップを図ることができます。しかし、その反面で社内の人と勤務時間がずれてしまい、コミュニケーションがとりにくくなるという問題は出てくるでしょう。また、労務管理が複雑化しやすいという点に注意しなければなりません。
フレックスに関わる用語の意味を確認!
フレックスタイム制度について調べていると「コアタイム」と「フレキシブルタイム」という2つの用語を目にする人は多いでしょう。この2つにはどのような意味があるのか説明していきます。
コアタイムとは?コアタイムを設定する意味
コアタイムとは「必ず出勤していなければならない時間帯」のことで、この時間帯には全社員が出勤することになります。必ず設けなければいけないということではありませんが、たとえ出勤時間と退社時間がバラバラになっても、コアタイムでコミュニケーションをとったりミーティングを行ったりすることが可能です。コアタイムには遅刻や早退があり、この時間帯に社内にいない場合には何らかの罰則を設けている企業もあります。
フレキシブルタイムとは
フレキシブルタイムは「働いていい時間」のことです。つまり、フレキシブルタイムのあいだであれば、自由に勤務時間を決められることになっています。企業によってフレキシブルタイムの決め方はさまざまですが、たとえば6時〜20時といった具合に幅を持たせて設定されているのが一般的です。このなかで1時間休憩の8時間労働をする場合、10時に出勤して19時に退社してもよいということになります。夕方以降はプライベートにあてたいという場合は、7時に出勤して16時に退社することも可能です。
コアタイムの設定はどうすればいい?
では、全社員が必ず出勤していなければならないコアタイムはどのように決めたらいいのか説明していきます。
実はコアタイムの設定は自由
前述したように、コアタイムは必ず設定しなければいけないというものではありません。業種によっては、必ず全社員が勤務する時間帯をつくる必要性がない場合も出てくるでしょう。必要がないのにわざわざコアタイムを設けるのは意味がありませんし、せっかくフレックスタイム制度を導入する意味が薄れるかもしれません。ですから、あえて「必ず全社員が会社にいなければならない時間帯をつくらない」という選択肢もあります。
また、コアタイムを設定する時間帯によっては、フレックスタイム制度を導入する意味をなさなくなる場合もあるので注意が必要です。たとえば、これまでの始業時間と同じに設定してしまえば、朝の満員電車を避けられないといった問題が出てくるでしょう。
一般的にコアタイムはどのように設定されているのか
コアタイムを設けている企業のなかで多いのは、10時〜15時の範囲です。この時間帯は朝早い出勤時間とも言えませんし、退社時間が遅くなるという心配もありません。そのうえ、この時間帯であれば業務に就いている企業が多いため、連絡が取りやすく、取引にも支障が出ることはないでしょう。実際にコアタイムを導入する際には、自社にとって必ず必要かどうかをまず考えることが必要です。そのうえで、設定するならどの時間帯にすればメリットが高いかなどを考慮するといいでしょう。
フレックスを始めるならこの2つは必須
フレックスタイム制度を採用するには準備が必要です。ここでは、フレックスタイム制度を導入するにあたってどのような準備をしておいたらいいのか説明していきます。
就業規則への明記
就業に関する規定は、就業規則へ記載し、管轄の労働基準監督署へ届出なければなりません。これまでフレックスタイム制度を採用していなかった企業が新たに導入する場合は、必ず就業規則に盛り込む必要があります。そして、労働基準監督署へ届出を行ったうえではじめてフレックスタイム制度を導入できるようになります。就業規則には、コアタイムの設定やルールについても明記しましょう。たとえば、コアタイムは何時から何時までなのか、コアタイムに遅刻した際は何らかの罰則を設けるのかといったことも記載します。
フレックスタイム制度で重要なのは、社員自身が自分で勤務時間を決められるということです。ですから「出勤時間や退社時間の選択は、社員自身に委ねる」など、きちんと明記することが求められます。
労使協定の締結
フレックスタイム制度を導入する際、その基本方針について労働組合やその代表者が最終的に決定を行うことになっています。この場合、考えておかなければならない項目はいくつかあります。まず、フレックスタイム制度の対象となる社員の範囲、そして労働時間、さらにコアタイムやフレキシブルタイムの設定も必要です。コアタイムは、そもそも必要かどうか、そこからじっくり考えて決めるようにしましょう。ほかには、清算期間の起算日をいつにするか決め、さらに清算期間内の総労働時間なども決めておかなければなりません。
フレックスタイム制度における労働時間の扱い
勤務時間を全社員同じに固定しているケースとは違い、フレックスタイム制度によって社員が出勤時間を自由に選択できるようになれば、管理をするうえで考えておかなければならないことが出てきます。ここでは、フレックスタイム制度の導入によって労働時間をどのように扱うべきか解説していきます。
フレックスタイム制度の労働時間の考え方「清算期間」
出勤時間や退社時間を社員自身が決められるといっても、全体の労働時間そのものを短縮することはできません。そのため、フレックスタイム制度には「清算期間」という考え方があります。清算期間とは、総労働時間を達成しなければならない期間のことで、通常は1カ月で設定されているのが一般的です。ただし、2019年に労働法が改正されてからは、最長で3カ月間まで可能になっています。そして、この清算期間とは「所定労働時間」のことで、つまり「法定労働時間」のことを指しています。法定労働時間では、週に40時間、1日に8時間までと決められており、その範囲内で勤務時間を選択できるということです。
有給や残業は?
フレックスタイム制度を導入した場合も、有給や残業について決めておかなければなりません。有給とは「1日の標準労働時間」分を働いたとみなして休暇にあてることができます。また、残業代については、法定時間外労働が発生した場合に割増賃金として支給しなければなりません。フレックスタイム制度を導入する際でも、有給休暇や残業代など、通常の働き方と変わらない待遇を考える必要があります。フレックスタイム制度のルール作りをするにあたっては、さまざまな手当てが抜けることのないようにし、労働法に抵触しないよう注意しましょう。
フレックスタイム制度は最初でルールを決めてしっかり管理!
フレックスタイム制度を導入することで、社員一人ひとりのライフワークバランスの促進を図ることが可能になります。全体の時間配分が無駄なくできるようになれば、業務効率をアップさせることもできるでしょう。しかし、労務管理が複雑になるという問題も出てきます。複雑になった労務管理で困ったら、rakumo キンタイのような便利なツールを活用すると管理が効率的になり、管理側の負担も軽減できるでしょう。