社会医療法人岡本病院(財団)
- 業種
- 医療/福祉
- 規模
- 1001人〜5000人
- 導入内容
- rakumo ワークフロー / rakumo ボード / rakumo コンタクト / rakumo カレンダー
全国を網羅する医療ネットワークの誕生に向けて―Google Workspaceとrakumoサービスで円滑な情報共有や業務効率向上を実現
課題
- 院内ネットワークからしか利用できないグループウェア
- 大規模災害など有事の際、職員の安否確認や院内情報の迅速な取得が困難
- 院内における情報共有手段が複数系統あり管理しづらい
- 意思決定スピードを鈍らせ、コストもかかる紙ベースの申請書類
決め手
- Google Workspaceとの親和性が高くアカウント管理も容易
- Google Workspaceに不足していた機能を低コストで補完できる
- IT業界における一般的な要素技術だけで扱える
導入効果
- 万が一の被災時でも院内・院外を問わず迅速なコミュニケーションが可能に
- 情報系統が統一され、情報の発信側・閲覧側ともに利便性が向上
- スケジュールや空き施設の確認・管理が容易に
- ワークフローにより申請業務の大幅な効率化およびペーパーレス化を実現
- 院内・院外の連絡先を素早く探し出すことが可能に
京都府内で3つの医療機関と7つの介護施設を運営している社会医療法人岡本病院(財団) では、院内ネットワークからしか利用できないグループウェアから脱却するべく、Google Workspaceとrakumoサービスを導入。万が一の被災時でも院内・院外を問わず迅速なコミュニケーションが可能になったほか、情報発信・閲覧の利便性向上、スケジュールや空き施設のスピーディーな確認、ワークフローにより申請業務の大幅な効率化およびペーパーレス化、などを実現しました。今後は、全国を網羅する医療ネットワークの誕生に向けた取り組みを推進していく予定です。
院外からアクセスできない旧グループウェアや医師の労務管理が課題に
御院の概要についてお教えください。
社会医療法人岡本病院 (財団)京都岡本記念病院 副院長 北岡 有喜 様(以下、北岡 様) :
1906年、京都市伏見区に開設された診療所を起源とする当法人では、病院や訪問看護、デイケアセンター、リハビリテーションセンターなど、京都府内で3つの医療機関と7つの介護施設を運営しています。その中でも病床数419床を有する京都岡本記念病院は、二次救急指定の基幹病院として積極的に高度先進医療へ取り組んでおり、京都府南部において中心的な役割を担っている急性期病院です。
従来の環境と、その課題についてお聞かせください。
北岡 様 :
当院では、電子カルテ内の情報をランサムウェアなどのサイバー攻撃から守るべく、インターネットと切り離して運用しています。その影響で、グループウェアについても院内ネットワークからしか利用できない状況でした。しかもライセンス費用が高額のため、医師や看護師など一部職員のコミュニケーションにしか利用できなかったのです。
一方で京都府は、南海トラフ地震を含むさまざまな大規模災害の発生が懸念されるエリアです。なにより1995年に阪神淡路大震災を経験し、一帯の復興を担当してきた経緯から、医療を提供する立場として被災時でも院内・院外を問わず迅速にコミュニケーションをとれることが最重要であると学びました。急性期病院としての機能を維持するためには、まず職員の安否確認を実施し、病院へ駆けつけられる人数や、院内の状態をすべての職員が把握・共有できる仕組みが必要不可欠です。こうした点において、院外からアクセスできない旧グループウェアは明らかに機能不足でした。
社会医療法人岡本病院(財団)副理事長・ 京都岡本記念病院 院長 髙木 敏貴 様(以下、髙木 様) :
もうひとつのきっかけは、医師の働き方改革において労務管理が必要になってきたことです。出退勤や出張届など、紙の書類をベースとした昔ながらの方法では、今後の労務管理は行えません。一般の従業員に関してはすでに働き方改革が始まっている状況で、医師の労務管理をどうするかが課題でした。
北岡 様 :
こうした課題を抱える中、当法人では京都岡本記念病院の南側隣接地を用いて、2025年4月に回復期リハビリテーション病棟50床、地域包括ケア病棟50床、計100床の「くみやま岡本病院」を開院する計画が進んでいました。そこでこの開院を機に、社会医療法人岡本病院(財団)の全関連施設で事務処理の効率化や円滑なコミュニケーションの実現を図るべく、システム関連の大幅な見直しを実施。その一環として、2021年の年末よりグループウェアのリプレイス検討もスタートしたのです。
充実した機能に加えてGoogle Workspaceとの親和性の高さが決め手
リプレイス先の選定ポイントはどのようなものでしたか?
北岡 様 :
新たなグループウェアには、院内・院外からのセキュアなアクセスに加え、社会医療法人岡本病院(財団)として全体で約1600名の職員に個別のアカウントを振り分け、なおかつ事務処理なども含めてシングルサインオンでスムーズに運用していける柔軟性の高さも求められます。このような条件を満たすクラウドサービスとして、セキュリティレベルの高さと稼働率99.9%のSLA(Service Level Agreement:サービスレベル保証)、さらには充実のコミュニケーション機能などを備える「Google Workspace」を選択しました。
また、Googleのサービス自体が広く世に知られている点も選択理由のひとつといえます。いまや「Gmail」を知らない人の方が少ないですし、“インターネット検索=Google”と認識している人もいるくらいです。こうした社会的認知度の高さは、リプレイスに対してユーザーが抱く不安の低減、そして順応・習熟スピードの向上にもつながるため、ITリテラシーの壁を越えて大勢の方々に受け入れられやすいと感じました。
ただし、Google Workspaceの標準機能だけでは、院内の各種業務やコミュニケーションをすべて賄えないことも理解していました。そこでワークフローや掲示板など、Google Workspaceで不足している機能を補えるものとして選んだのがrakumoサービスです。
rakumoサービスをお選びいただいた決め手についてお聞かせください。
北岡 様 :
一番の理由は、Google Workspaceとの親和性の高さです。rakumoサービスはGoogle Workspaceを前提として設計されているため、アカウント管理の容易さはもちろん、機能面でもGoogle Workspaceのウィークポイントを見事にカバーしてくれています。また、IT業界における一般的な要素技術だけで扱えるのもポイントのひとつですね。
髙木 様 :
機能的には申し分ないのですが、唯一の不安要素だったのがコスト面です。そこで、実際にどれくらいの費用がかかるか、人件費や紙の削減などでどれくらい回収できるかなどを算出した結果、十分な費用対効果が得られると判断し、導入を決定しました。
導入時のエピソードについてお聞かせください。
北岡 様 :
Google Workspaceとrakumoサービスの導入に関して、計画自体はほぼ同時並行で進めていました。しかし実務の観点では、ユーザーがGoogle Workspaceをある程度使い慣れてから先に進む必要があります。そこで、2023年6月にGoogle Workspaceを本格稼働すると同時に、rakumo Basicパック 1380IDおよびrakumo ワークフローのローカルファイル添付オプションを契約しました。その後は、rakumo カレンダーとrakumo コンタクトを先行稼働させるとともに、ワーキンググループでrakumo ボードの運用ルールを固めてから正式リリース。rakumo ワークフローについては各種申請書の作成を進めつつ、2023年10月よりrakumoサービス全体の本格稼働をスタートしています。導入の作業自体は、電子カルテなどのシステムと比べると容易なので、特にトラブルもありませんでした。
社会医療法人岡本病院(財団)法人事業部 情報管理・分析部 情報システム課 丸井 大地 様 :
私はリプレイスに関するサービスデスク業務を担当していました。導入直後は操作関連の質問が多く寄せられましたが、特に大きな問題やクレームなどはなかったですね。
円滑な情報共有や予定管理、申請業務の効率化など多数のメリット
導入された後の反応や手応えはいかがでしたか?
社会医療法人岡本病院(財団)法人事業部 広報部 広報課 課長 小松 育美 様 :
rakumo ボードは、広報課が主体となって管理しています。全職員が直接書き込めるのではなく、Google フォームに投稿された内容を基に、権限を与えられた部署の担当者が代理投稿する形式です。内容については、院長のチェックを経由することで、ガバナンスの統制も行っています。
現在の投稿内容は、院長メッセージや各部門からのお知らせなど、全職員向けの情報発信が中心です。従来は、システム関連や電子カルテ関連など情報の発信・取得場所がバラバラで、なおかつPC自体を使えない職場向けでは物理的な掲示板にも貼り出すなど、複数箇所でのアナウンスが必要でした。しかも、コロナ禍では院内のルールが毎日のように変わり、修正を含めて1日に複数系統で何度もアナウンスしなければいけなかったのです。しかしrakumo ボードの導入後は情報系統が統一されたことに加え、院内・院外を問わず職員個人のスマートフォンからアクセスできるようになり、発信側・閲覧側の双方で利便性が大幅に向上しています。
また、朝礼や研修時の様子を動画で投稿することにより、業務都合上参加できなかった職員が情報を取得しやすくなったのも大変便利です。そのほか最近では、看護部や診療事務課など部署ごとのボードも設置しています。
rakumo カレンダーについても、予定の一覧性が向上したと好評です。Google カレンダーのみの場合、他の先生や設備の空き状況を確認する際に、切り替えや共有といった面倒な手順が必要でした。しかしrakumo カレンダーなら、カスタムグループ機能で任意ユーザーの予定が一緒に見られますし、会議室の空き状況も容易に確認できます。現在ではGoogle カレンダーを個人の予定管理用、rakumo カレンダーを組織全体の予定管理用として提案することで、個人と院内全体をバランス良くマネジメントできるようにしています。
髙木 様 :
rakumo ワークフローについては、出張や購入の申請・承認・差し戻しなどもスマートフォンから行えるようになり、申請者・承認者の双方で圧倒的に負担が減りました。現在では1日あたり100件ほどある申請の大半が電子化されており、ペーパーレス化によるコスト削減および意思決定のスピード向上、さらには人事や経理の担当者が手入力していた業務がすべて自動化されたことで、コストや人員の削減にもつながっています。まだ紙の書類が残っている部分もありますが、こちらも順次rakumo ワークフローに切り替えていく予定です。
北岡 様 :
従来はMicrosoft Excelで作成した電話番号一覧表を月1回のペースで更新していましたが、どうしても情報が古くなってしまいます。また、院内で利用しているPHSも電話帳登録数の限界から全部署が登録できない上、検索機能も弱く調べにくい状況でした。しかし現在では、rakumo コンタクトのおかげですぐに内線番号や連絡先を調べられるようになっています。また、開業医との患者さんの紹介・逆紹介の際、電子カルテの情報にはセキュリティ上、院外からアクセスできません。地域の先生方の連絡先共有にはrakumo コンタクトを用いたセキュアな方法も検討中です。
全国を網羅する医療ネットワークの誕生に向けて
現在、Google Workspaceとrakumoサービスをどのように運用されていますか?
北岡 様:
当院の各種情報は「Google Cloud」上で構築した院内ポータルに集約されています。これは、私が考案・開発した個人向け健康情報管理サービス基盤「ポケットカルテ」の技術を用いたもので、シングルサインオンで院内ポータルにアクセスすれば、rakumo ボードのガジェットや各種rakumoサービスへのショートカット、出退勤管理、各種電子ジャーナルなど、あらゆる情報を確認できます。現在、GCPの機能で“誰が・どれだけ・なにを使っているか”が判別できる自動統計の仕組みを構築中ですが、大まかな見積りの範囲でも各職員の使用率は99.8%にまで達している状況です。
今後のご予定やご要望についてお聞かせください。
北岡 様:
京都岡本記念病院は、京都府下でも救急搬送件数が多い病院のひとつとして、年間約7000件弱の受入を行っていますが、それでも2022年度は約1700件、2023年度でも約500件が諸事情によりお断りせざるを得ない状況です。今後少しでもカバー率を上げ、より地域に根付く病院になっていくためには、電子カルテだけでなく事務的なワークスペース上でも円滑な情報共有を進めていく必要があります。2025年4月に開院予定の「くみやま岡本病院」についても、病床数は100床と限りがあるため、地域の病院へ患者さんを受け渡していかなければなりません。こうした状況において、他の病院でも当院と同じような形でポータルを運用してもらい、病床や医療機器、手術室の空き状況など各種医療リソースが共有可能になれば、地域全体が巨大なバーチャルホスピタルとして運用できるようになります。
ちなみに、マイナンバーカードに保険証機能やワクチンの接種歴、特定検診の結果などが記載されるようになったのは、「ポケットカルテ」および同時に開発した地域共通診察券「すこやか安心カード」の技術がベースとなっています。このような点を鑑みても、バーチャルホスピタルを構築するには十分なポテンシャルといえるでしょう。
髙木 様:
現在、日本政府が地域連携を推進していますが、当院ではこうしたシステム化によりお互いの医療・患者情報をネットワーク経由でリアルタイムに共有し、患者さんがどこの医療機関でも適切な治療が受けられる社会を目指しています。これを実現するためには、まず院内の情報共有が必須です。各病院の“点と点”がエリア全体をカバーする“面”に変化し、社会全体の医療構造自体を変えていくことにつながるわけです。
すでにサテライト構築の取り組みも進んでおり、静岡県内の公的医療機関で当院をベースとしたシステムが稼働を始めているほか、東京都内をはじめ複数のエリアで新たな計画が始動しています。当院では今後も引き続き、全国を網羅する医療ネットワークの誕生に向けた取り組みを推進していく予定です。
ありがとうございました。
(取材時期:2024年6月)
事例で利用されている「便利な機能」
社会医療法人岡本病院(財団)
事業内容:医療機関および介護施設の運営
従業員数:約1600名
*掲載内容は取材時点のものです。