Google Workspace の道しるべ

退職・異動で慌てない情シスへ。Google Workspace のアカウント&データ運用術

人事異動や退職のシーズンを迎えるたびに、アカウントの追加・削除や膨大なデータの引き継ぎ作業に追われている方も多いのではないでしょうか。

人が入れ替わるたびに管理業務に振り回されるのは、情シス担当者なら誰でも経験したことがある悩みと言えるでしょう。しかし、 Google Workspace の標準機能を正しく理解し、運用を「仕組み化」しておけば、いざという時も慌てる必要はありません。今回は、アカウント管理とデータ管理の両面から、負担を減らす運用のコツを解説します。

なぜ人が入れ替わるたびに管理業務に振り回されるのか?

Google Workspace の導入がかなり浸透し始めたオコマリエステート。運用面は順調ですが、とある新たなお悩みにぶつかっているようです。

システム管理者 : 城 資寿彦 (じょう しすひこ) さん
情報システム部

社内のシステム管理を担当している。

Google Workspace 導入担当者 : 布呂 真音美 (ぷろ まねみ) さん
事業推進部

Google Workspace の導入担当者。社内調整が得意。

布呂さんお疲れ様です。オコマリエステートで今度大きめの人事異動と退職者が数名出るって聞いていますよね。

それを聞いた総務や各部署のマネージャーから、「アカウントの削除ってどうやるの?」「退職するメンバーが持っているファイルってどうやって引き継げばいいの?」って問い合わせが一気に情シス側に押し寄せてきているんです。

確かに、きちんとルール決めをしておかないと、データが消えたり、メールが引き継げなかったりといろいろなトラブルが発生しそうですよね。

前職でも、異動や退職者が発生するたびに「あの資料はどこにあるんだ?」とマイドライブを探して回ったり、慌てて個別に権限変更をしたりして、通常業務の対応が遅れてしまうことがよくありました。

おそらく今回の対応で私にもたくさん問い合わせが来そうなので、その場しのぎは避けたいところです。

Google Workspace のアカウント管理とデータ管理の特性を理解して、あらかじめ運用の「仕組み化」をしておけば、誰がいつ入れ替わっても定型業務として回せるようになるはずです。今日はこうした際のルールについて決めていきましょう!

はじめての Google Workspace 導入&移行 ガイド

仕組み化の第一歩:入退社・異動に伴うアカウントと Google グループ の運用

Google グループ

ではまず、入退社・異動に伴うアカウントと Google グループ の運用から整理していきましょう。その場しのぎにしないための考え方は、すべてを「連動」させることです。

Google グループについてはこちらもご参照ください

連動とはどういうことでしょうか?

アカウントの追加や削除、グループの所属変更を、単なる「 IT の作業」として捉えるのではなく、人事の発令プロセスと完全に連動したチェックリストにしてしまうんです。

新入社員の追加と Google グループ による権限一元化

新しく人が入ってきたときは、アカウントを発行するのと同時に、該当する部署やプロジェクトの Google グループ へ登録しましょう。

Google グループですが、複数の Google Workspace ユーザーをまとめて管理・連携するための機能です。具体的には以下のようなことが行なえます。

  • グループメール
    メンバーへの一斉送信が可能。
  • 共有設定の一元化
    Google ドライブなどの共有設定をグループ単位で行える。
  • アクセス管理の効率化
    メンバーの追加・削除だけで関連する共有設定が自動更新される。

詳しくはこちらをご参照ください。

Google グループ って、メーリングリストとして使うものだと思っていました。

メーリングリストとしての機能は基本ですが、最大の強みは「共有設定の一元化」と「アクセス管理の効率化」にあります。

例えば、特定の共有フォルダの閲覧権限を個人のメールアドレスではなく、 Google グループ のアドレス(例: sales-dept@example.com )に対して付与しておくんです。

メールグループの作成方法はこちらをご参照ください。

Google グループによる権限一元化のイメージ( Gemini で生成)

ということは、新入社員のメールアドレスをグループに1つ追加するだけで、その部署のメンバーがアクセスできるファイルやフォルダの権限が自動的に一括付与されるわけですね!

その通りです。 個別のファイルごとにメールアドレスを打ち込む手間が不要になりますし、権限の付け忘れというミスも防げます。

異動・退職時の対応もグループで完結

逆に異動や退職が発生した場合は、そのアカウントを Google グループ から除外するだけで、旧部署に関連するすべての共有アクセス権を削除できます。

なるほど!「あのファイルの権限を消し忘れた……」といったセキュリティリスクも、グループ運用をベースに仕組み化しておけば回避できそうですね。

このフローを導入すればその場しのぎの作業にならず、人事の動きに合わせてグループをメンテナンスするだけの定型業務に落とし込めそうです。

データ管理の鉄則 マイドライブ運用から共有ドライブへ移行

個人的に一番トラブルが起きがちだと思っているのがデータ(ファイル)の引き継ぎです。

退職する人が自分で作ったファイルをマイドライブに置きっぱなしにしていると、アカウントを削除するとファイルが消えてしまいますよね…。

個人の「マイドライブ」に保存されているファイルは、そのアカウントがオーナー(所有者)になります。

そのため、引き継ぎ手続きをせずにアカウントを削除すると、業務に必要な重要データまで一緒に消失してしまうリスクがあるんです。

やっぱり、退職前に1ファイルずつオーナー権限を後任の人に移す作業をお願いするしかないんでしょうか?

いいえ、その面倒な作業自体を「最初から不要」にする仕組みがあります。それが「共有ドライブ」の活用です。

共有ドライブの使い方についてはこちらもご参照ください。

共有ドライブは、ファイルやフォルダの所有権が個人ではなく「組織(会社)」に帰属する場所ですよね。

その通りです。マイドライブと共有ドライブの運用の違いを簡単な表にまとめてみたので、見てみましょう。

個人ドライブ
(マイドライブ)
共有ドライブ
( Business Starter )
共有ドライブ
( Business Standard )
ファイルの所有権個人(アカウントに紐づく)組織(ドライブ自体が所有)組織(ドライブ自体が所有)
退職時のリスクアカウント削除でデータが消失する危険ありアカウントを削除してもデータはそのまま残るアカウントを削除してもデータはそのまま残る
引き継ぎの手間ファイルごとの権限移譲やダウンロードが必要不要(後任者をメンバーに追加するだけ)不要(後任者をメンバーに追加するだけ)
容量の管理個人ストレージに依存ユーザー1人あたり30GB (組織プール)ユーザー1人あたり2TB (組織プール )
共有ドライブの管理機能デフォルト共有権限の設定・共有設定の変更が不可管理者による細かいアクセス権限設定が可能

組織プールとは :
各ユーザーに割り当てられた個人ストレージとは別に、組織全体で共有して使える大容量のストレージ領域のこと。特定のユーザーが容量を使い切っても、組織プールの余裕分から融通できる仕組み。

共有ドライブに最初からファイルを保存しておけば、作成した人が退職してもファイルが消えないんですね。これなら、退職時の引き継ぎ作業の負担がほとんどゼロになります。

退職・異動が起きた際の基本対応フローを事前に決めておこう

共有ドライブのメリットはとてもよく分かりました。

でも共有ドライブの利用ルールを作っていても、メールやマイドライブに作ったファイルなどの引き継ぎはどうすればいいのでしょうか?

次の「5つの基本対応フロー」を頭に入れておけば、冷静に、かつ安全に対処することができます。管理コンソールを操作するチェックリストとして覚えておくと便利ですよ。

フロー1:マイドライブ内データの保全

まずは、対象者が「マイドライブ」に作成してしまっていたファイルを保護します。

もし共有ドライブへの移行が徹底されていなかった場合でも、 Google Workspace の管理機能を使えば、管理者が一括で退職者のマイドライブの所有権を後任者(または上司)に移行することができます。

対象者のデータを保全するには、管理コンソールの [アプリ] >「 Google Workspace 」 > 「ドライブとドキュメント」 >「オーナー権限を譲渡」から「 Google ドライブや Google スプレッドシート」 などの所有権を譲渡します。

詳しくはこちらをご参照ください。

フロー2:メールやカレンダーの権限委譲

【メールの移行】
退職や異動の直後は、社外のクライアントから旧アカウント宛てに重要なメールが届くことがあります。これらを見落とさないための設定を行います。

詳しい方法についてはこちらをご参照ください。

【カレンダーの管理権限変更】
対象者が主催していた定期的なミーティングなどの予定詳細の[その他の操作]から[主催者を変更]で Google カレンダー の予定の所有権を変更します。

フロー3: Google グループ からの除外

他部署へ移動した人の場合、旧部署のメーリングリストや、プロジェクトごとの Google グループ から対象者のアカウントを除外します。これにより、異動前の部署の新しい情報や機密性の高いメールが、旧担当者に届き続けるのを防ぎます。

Google グループからアーカイブしたメンバーを削除するには、グループのオーナーまたはマネージャーが groups.google.com で対象グループを開き、メンバー一覧を表示し、削除したいメンバーのアイコンにカーソルを合わせてチェックボックスにチェック(複数選択可)したら画面右上の「メンバーを削除」(マイナスアイコン)をクリックします。

フロー4:セキュリティ対策(パスワード変更)

急な退職などの場合、社外からの退職者本人による不正アクセスを防いだり、管理者や部署の上長がアカウントにログインしたりする必要がある際は、パスワードを強制変更してアカウントへのログイン経路を即座に遮断する必要があります。

パスワードを強制変更するには、管理者が管理コンソールで[ディレクトリ]>[ユーザー]から対象ユーザー(退職者)を検索し、対象のメンバーにカーソルを合わせて[パスワードを再設定]をクリックします。

さらに「パスワードを自動的に生成する」を選択することで、本人が知らない安全なパスワードが自動生成され、退職者は既存のパスワードでログインできなくなります。

フロー5:アカウントのアーカイブ(または削除)

すべての引き継ぎと安全確認が完了したら、最終的にアカウントの処理を行います。ここで役立つのが 「アーカイブ ユーザー」 ライセンスの活用です。

アカウントを完全に「削除」してしまうと、過去のメール履歴やチャットのログなどを後から確認することが難しくなります。しかし、アカウントを「アーカイブ」状態にすれば、通常ライセンスよりも安価なコスト(エディションによる)で、データを安全に保持したままアカウントを無効化できます。

なお、アーカイブライセンスに変更した後は委任設定やアクセス権設定が行えないため、事前に管理者でログインして設定しておくなどの運用検討が必要です。

また、完全に不要になった場合はアカウントを削除することも検討してよいでしょう。 Business Standard ではアドオン利用が必要になりますが、部長や役員クラスのデータについてはアーカイブ化して、組織向けのデータ保持および電子情報開示サービス「 Vault 」の対象にする企業もあります。

詳しくはこちらをご参照ください。

この5つのフローが頭に入っていれば、どんなに急な引き継ぎ案件が飛び込んできても、「まずはステップ1のデータ移行から進めよう」と落ち着いて対応できますね。

その通りです。特にフロー4のパスワード変更によるアクセス遮断と、フロー1のデータ移行を迅速に行うことが、リスクマネジメントにおいて重要です。

まとめ:アカウントとデータの「仕組み化」で効率化を

城さん、ありがとうございます!

これまで人が入れ替わるたびに発生していた「あのファイルどこ?」「権限どうする?」というトラブルは、単に仕組み化ができていなかっただけなんだと痛感しました。

最初から業務データを「共有ドライブ」に置くルールを徹底し、アカウントの権限は「 Google グループ」で管理する。この2つを組織の当たり前にするだけで、私たちの管理業務の負担は激減します。

オコマリエステートでも、今回の人事異動や退職への対応を機に「データは最初から共有ドライブへ保存する」というルールを全社にアナウンスして、しっかり定着させていきます!

担当者からのワンポイントアドバイス

従業員の入退社や異動に伴う管理業務の効率化は、多くの企業が抱える課題です。 Google Workspace では、退職者のアカウントを削除するとそのアカウントが作成したデータも失われてしまうため、単にアカウントを削除するだけの運用では、会社にとって重要なデータまで消えてしまうリスクがあります。

そこで、 Business Standard の「共有ドライブ」を軸としたデータ保存の仕組み化や、アーカイブライセンスの活用によって、会社のデータを削除せずに保持する運用を検討することが重要です。こうした仕組みにより、データを確実に残しながら、情報漏洩などのセキュリティリスクへの対策も行い、業務効率を最大化できます。

組織に合わせた共有設定のルール作りや、ライセンスの最適化、 Google Workspace の効果的な社内浸透・運用方法でお困りのことがございましたら、いつでもお気軽にこちらのフォームよりご相談ください。

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