生産性とコラボレーションを加速する Google Workspace
〜Excel のベテランユーザーが Google スプレッドシートに転向〜
Google Workspace の良さは分かっていても、全社規模での切り替えは難しい、と考えている CIO は多いかも知れません。Microsoft 365 で提供されている3大アプリの WordとExcel と PowerPoint は、ビジネスに不可欠の存在となっています。その中でも、Excel を縦横無尽に使いこなすエクセルマニアの存在は、Office アプリから Google Workspace への移行にとって大きな壁です。Excel で凝りに凝って作ってきたワークシートの数々は 「Google スプレッドシートでは対応できない」 と否定されがちです。しかし、本当にそうでしょうか?
業務の継続性という観点から捉えたときに、特定のアプリの属人的なスキルに頼る仕事のやり方は、担当者の転職や退職により 「Excel に依存してきた仕事が続けられなくなる」 という影響をもたらします。また、本当に Excel でなければ処理できない業務があるのでしょうか。その答えを Google がブログで公開しています。
「ベテランの財務リーダーがどのようにして Google スプレッドシートに転向したか」 というブログでは、25 年以上のテクノロジー ファイナンスの経験を持つコーポレートファイナンスの専門家が、Excel から乗り換えたポイントを語っています。
財務に必要な計算機能は Google スプレッドシートで十二分
ブログに登場するエリック・レフエルゾ氏は、財務計画の分析から戦略、合併や買収まで、財務のあらゆる側面に携わってきたテクノロジー ファイナンスのエキスパートです。Cisco、VMware、Hitachi Vantara などの企業で CFO として働いていたキャリアがあります。25年以上のキャリアを通して、レフエルゾ氏は Excel を使い続けてきました。しかし、Google へ転職するにあたり、これまで Excel でこなしてきた業務を Google スプレッドシートで対応できるのか検討しました。その中で、レフエルゾ氏は 「Excel には多くの機能がありますが、その多くは財務の世界では日常的に使用されていません」 という結論に至りました。また 「前の会社で働いていたとき、オンプレミスから Microsoft 365 への移行は非常に苦痛でした。そして間違いなく、Excel に関する最大の不満の1つは、クラウドへの移行がぎこちないことです」 とも指摘します。そして 「リアルタイムの共同作業で、自分が作業しているシートをダイレクトに共有する働き方は、アクティブなコラボレーションを生み出します。スプレッドシートとその他の Google Workspace が、私と私のチームをいかに生産的で共同作業に役立っているかに驚かされました」 と感想を語ります。
さらに、レフエルゾ氏は Google スプレッドシートのコネクテッド シートという機能に触れ 「使い慣れたスプレッドシート インターフェースで数十億行の BigQuery または Looker Studio のデータを分析し、他の内部データソースを取り込むことができます。また、何らかの理由で外部から Excel ファイルが送られてきても、安全かつシームレスにスプレッドシートにインポートできます」 とも説明します。つまり、 Excel を25年以上にわたって財務の世界で使い続けてきたヘビーユーザーでも、財務に必要な計算機能は Google スプレッドシートで十二分と太鼓判を押しているのです。
Google スプレッドシートで機能しない関数は6つだけ
エクセルマニアがこだわるのは、なんといっても500を超える関数です。中でも、超ヘビーユーザーは VLOOKUP に代表される高度な参照系の関数を駆使して、まるでデータベースのように Excel を使いこなしています。もうひとつのこだわりは、マクロです。業務の効率化やエクセルのスキルが低い他のユーザーのために、できるだけ手間のかからない計算処理を補佐するために、高度なマクロを設計しています。さらに、Excel では関数の使い方をヘルプが親切に表示してくれる、という点を評価する声もあります。
こうしたエクセルマニアのこだわりは、本当に Google スプレッドシートへの移行の妨げとなっているのでしょうか?
まず第一の 「関数」 について、Google では 「機能しない関数は6つだけ」 と回答しています。
反対に考えると、VLOOKUP や IF のような関数は、すべて Google スプレッドシートで利用できるのです。実際に、Excel で保存されたブックを Google スプレッドシートに読み込むと、ほとんどのブックは正常に機能します。
次にマクロですが、情報セキュリティ対策の観点からは、Excel や Word でのマクロ利用は、できる限り控えるべきでしょう。Emotet(エモテット)に代表される悪質なマルウェアは、Excle のマクロに感染源を仕込んでいます。最新版の Excle でも、ダウンロードしてきたブックは、ユーザーが許可しない限りマクロを実行しません。加えて、マクロに依存する Excel 利用は、業務の属人化の原因にもなります。どうしてもマクロに頼る処理が必要であれば、Google スプレッドシートにも、文法は違いますがマクロが提供されています。
そして第三のヘルプですが、Google スプレッドシートにも丁寧な解説が用意されています。関数の一部を入力すると、セルの横に ? マークが表示されるので、そこをクリックすると詳細な解説が表示されます。
ほとんどの Excel 業務は Google スプレッドシートへ移行できる
結論として、Excel のベテランユーザーが Google スプレッドシートに転向できたように、ほとんどの Excel 業務は Google スプレッドシートに置き換えられます。それに加えて、クラウドを活用したコラボレーションにより、Excel 時代には体験できなかった共同作業が可能になります。
ただし、このコラムを執筆している時点で、ひとつだけ Excel と Google スプレッドシートで、使い勝手が大きく異なる機能があります。それはテキストボックスに代表される 「図形」 の処理です。Excel では、ワークシートの上にダイレクトにテキストボックスや図形を描画できます。それに対して、Google スプレッドシートでは、図形やテキストを編集するために 「図形描画」 という別の画面が表示されます。これは、クラウド側でのデータ処理に起因するものなので、テキストボックスを乱用して、Excel をまるでワープロソフトのように使いこなしているユーザーは、戸惑うかもしれません。しかし、データに互換性はあり、図形として挿入されているテキストボックスも、Google スプレッドシート内で移動も編集もできるので、業務に支障はきたしません。
ちなみに、コラムの冒頭で紹介したレフエルゾ氏は 「財務に必要な計算機能は Google スプレッドシートで十二分」 という評価に加えて、 「情報セキュリティ対策や事業継続性にパフォーマンスの一貫性」 などの観点からも、 Google Workspace を利用するメリットについて語っています。そのテーマに関しては、またの機会に紹介したいと思います。