Microsoft 365 との比較

その業務に Office 2021は必要ですか?
〜 Word のプロが分析する使わない機能の数々〜

「できる Word 2021」 という書籍があります。この本は、1994年から書き続けている Word の解説書で、かれこれ約30年の付き合いになります。

「できる Word 2021」 の執筆を通して、筆者は Word の機能に精通していますが、入門書という制約もあるので書籍で紹介している機能は、全体の約6割ほどにとどめています。それでも、日ごろの業務で Word を利用する人にとっては、あまり使わない操作なども紹介しているので、実際に Word を使うために必要な技能としては、約3割ほど習得できれぱ十分です。

約30年間、Word というアプリと付き合ってきて感じているのは、肥大化した機能と実用とのアンバランスさです。 「Word 2021で文書を作る」 という作業を車に例えるならば、小さな荷物を運ぶためにワンボックスカーを一人で運転しているようなものです。それは、社有車をすべてワンボックスカーにして、営業担当が取引先から依頼された小さな荷物を配達して回っているような感じなのです。そんな大盤振る舞いを、コスト意識の高い企業の経営者が許容し続けるのか疑問です。

実際の社有車の多くは、燃費や維持費などに配慮して軽自動車やハイブリッド車を選ぶ経営者が多いはずです。つまり、全社員が Word 2021あるいは Microsoft 365で Word を使えるように IT 環境を整える、という投資は実際には必要がないライセンスコストを大量に消費しているようなものです。

Word を知り尽くしているからこそ Google ドキュメントを選ぶ

Word の機能に精通している筆者ですが、日々の原稿書きには Google ドキュメントを使っています。

なぜなら、文章を書くというシンプルな作業には、余計な機能がいらないからです。左右の文字幅と行間隔さえ読みやすく調整できれば、横書きの文章では困らないのです。その他には、太字や下線などの基本的な装飾、罫線や文字の配置に段組みが使えたら十分です。まさに軽自動車のような感覚で Google ドキュメントを活用しています。

また Google ドキュメントは、Word の標準的な docx 形式も読み取って編集できるので、取引先から Word の文書ファイルを受け取っても困りません。 Google ドライブにある 「ファイルのアップロード」 でパソコンから Word の文書ファイルをクラウドにアップロードすれば、自動的に Google ドキュメントで編集できる形式に変換してくれます。

その反対に、Google ドキュメントで作成した文書も、ダウンロードで 「Microsoft Word (.docx)」 を選択すれば、 Word 2021などで編集できるファイル形式でパソコンに保存してくれます。

つまり、アップロードもダウンロードも Word の文書ファイルと互換性を維持しているので、日々の業務で Google ドキュメントを利用しても、取引先との文書ファイルのやり取りで困らないのです。

Google ドキュメント全社導入の秘訣は Word を否定しないこと

多くの人たちを快適に運ぶためにワンボックスカーがあるように、 Word にもそれなりの必要性があります。

例えば、画像と文字を高度に組み合わせたレイアウトや、何十ページにもわたる論文や技術書の作成に、印刷を意識した綺麗で見栄えのするデザインを求めるのであれば、 Word は必要十分な機能を発揮してくれます。

例えば、Word ではヘッダーを活用すると、文書の背面に画像をレイアウトできます。

また、画像に重ねる文字や図形には、色や透過などの凝った装飾が施せます。こうした機能を活用すると、チラシや社内報にパンフレットなど、人目を引く文書をデザインできます。これだけ高度なレイアウトになると、 Google ドキュメントで完全に再現するのは困難です。

サンプルの文書は、 Word のヘッダーに画像を貼り付けて、背景になるように明度などを調整しています。そして、通常の文書画面にワードアートによる装飾文字や、テキストボックスを挿入しています。これだけ凝ったレイアウトにすると、 Google ドキュメントでの再現性にも限界があります。画像に設定した明度は失われ、ワードアートの文字は再現されず、テキストボックスのレイアウトも崩れています。しかし、オリジナルの文書の編集要素は残っているので、再編集は可能です。

もう一方の Microsoft 365 Business Basic で利用できる Web 版の Word では、 Google ドキュメントよりも再現性が低下します。ワードアートの互換性は維持されていますが、ヘッダーに貼り付けた画像は表示されません。 OneDrive には、 Word 2021から保存しているので、データとしては残っていますが、 Web 版 Word による編集はできないのです。

もっとも、これだけ高度な編集機能を駆使できる社員は、社内にどのくらいいるのでしょうか。その限られた数名のエキスパートのために、全社員が Word のライセンスを契約する必要があるのでしょうか。むしろ、 Word を駆使できるエキスパートのために、 Microsoft Office Home & Business 2021(最新 永続版)ライセンスを取得し、それ以外の社員が Google ドキュメントを使うようにすれば、ライセンスコストは大幅に削減できます。

Google ドキュメントにできて Web 版 Word にできないこと

Google ドキュメントで文書を蓄積していくと、 「探すのが便利になる」 というメリットがあります。

Microsoft 365 Business Basic の Word で作成し OneDrive に保存された文書は、文書名とフォルダ名による検索しかできません。それに対して、 Google ドキュメントで作成し Google ドライブに保存されている文書は、書かれている内容まで検索できます。

検索の会社だけに指定できる条件も優れている

この違いは、 Google ドキュメントによって書かれた文書が増えていくほどに威力を発揮します。筆者が Word ではなく Google ドキュメントで原稿を書く理由に 「検索」 があるのです。過去に作成した文書を 「書いた内容で探せる」 Google ドキュメントの 「検索」 は、あらゆるビジネスの生産性と効率化に貢献できる魅力的な機能です。

Google ドライブに保存されているドキュメントは、その文章の中身まで検索できるから便利

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