業界別 DX コラム
公開 2026.05.14
更新 2026.05.07

リサーチから紐解く!8割が経験する「逆戻り」を防ぐには?
自治体DXを定着させるツール選定の新基準

自治体DXを推進するうえで、グループウェアやワークフローなどの庁内ツールは、今や欠かせない業務基盤となりつつあります。情報共有や申請・承認、庁内掲示板といった日々の業務をデジタル化すべく、多くの自治体で導入が加速しています。

しかし、庁内ツールは「導入」がゴールではありません。職員が日常業務で使いこなせなければ、結局は紙や電話といった従来の運用が残り、導入後に「以前のやり方へ逆戻り」してしまうケースも少なくありません。

rakumo 株式会社が、庁内ツール※の導入・運用に携わる職員115名を対象に実施した調査では、実に78.3%もの担当者がこの「逆戻り」を経験したと回答しています。本稿ではこの実態を踏まえ、自治体においてなぜツールが定着しにくいのか、調査結果をご紹介するとともに、ツール選定で見落としがちな視点について解説します。

※本記事における「庁内ツール」とは、グループウェアやワークフローなど、自治体内の職員間で利用される情報共有や事務手続きを支えるツール全般を指します。

INDEX

自治体DXの「理想」と、現場の「実情」。定着の壁となる、多忙な職員の操作負担

自治体DXを進めるうえで、庁内ツールを導入すること自体が目的化してしまうケースは少なくありません。新しいグループウェアの採用やワークフローによる電子決裁など、導入時には「業務を劇的に効率化できる」という期待が生まれます。

しかし、導入後の現場では、その理想とは異なる「実情」が浮かび上がります。操作を覚えるための時間が確保できなかったり、マニュアルを確認しながらでは実務が滞ってしまったり。こうした現場の課題を解消できないままでは、せっかくのツールも日常業務に浸透しません。

実際に調査結果を見ると、導入時の現場の反応として「忙しくて操作を覚える時間がない」が38.3%で最多となりました。次いで「説明会やマニュアルがあっても内容を理解しきれない」(37.4%)、「画面が複雑で操作がわかりにくい」(36.5%)と続いており、導入初期における「時間的・操作的なハードル」の高さが浮き彫りになっています。

こうした状況が生まれる理由は、職員の意欲やITリテラシーの問題だけではありません。住民対応や庁内調整、膨大な事務処理を抱える自治体職員にとって、新しい操作の習得は、日々の公務を圧迫する「追加のコスト」になってしまうからです。だからこそ、庁内ツールには「導入できるか」だけでなく、「多忙な環境下でも、無理なく使い始められるか」という視点が必要不可欠なのです。

庁内ツールはなぜ「以前のやり方」に戻ってしまうのか

約8割が、導入後の逆戻りを経験している

庁内ツールを導入しても、すぐに全庁的に活用が広がるわけではないのが実情です。調査では、ツール導入後に「以前のやり方」へ戻った経験について聞いています。

結果を見ると、「大部分が定着せず、以前のやり方に戻った」が18.3%、「一部の業務や人が、以前のやり方に戻った」が60.0%でした。これらを合わせると、実に78.3%もの担当者が何らかの形で「逆戻り」を経験していることがわかります。一方で、「完全にツールへ移行できた」という回答は16.5%にとどまりました。

この数字から見えるのは、庁内ツールの導入後に起こる逆戻りが、どの自治体でも起こりうる課題であるという実態です。ツールを入れても、業務の一部や一部の職員が従来の方法に戻れば、組織全体のデジタル化は進みません。むしろ、紙・メール・電話といった既存のやり方と新しいツールが併存することで、確認作業の増大や「運用の二重化」を招き、かえって現場の負担を増やしてしまうリスクすらあります。

庁内ツールを真に定着させるには、単にシステムを稼働させるだけでなく、「どの業務を」「誰が」「いつまでに」ツールへ移行させ、従来の運用をどこまで削減するのかという、明確な「運用設計」が不可欠です。現場の使い方が変わらないままツールだけが導入された状態こそが、逆戻りを引き起こす最大の要因といえるでしょう。

逆戻りの主な理由は、周囲が使わないと業務が完結しないこと

逆戻りの理由を見ると、庁内ツールの定着が個人の努力だけでは解決しにくいことがわかります。

Q2で「大部分が定着せず、以前のやり方に戻った」「一部の業務や人が、以前のやり方に戻った」と回答した人に理由を聞いたところ、「周囲の職員がツールを使っておらず、自分だけでは完結しなかった」が47.8%で最多でした。続いて、「ツールの操作に慣れず、従来の方法の方が早かった」が44.4%、「ツールの機能が業務の実態に合っていなかった」が36.7%となっています。

最多となった「自分だけでは完結しなかった」という回答は、自治体業務特有の「連鎖的な構造」を色濃く反映しています。自治体の公務は、起案者から確認者、承認者、そして管理者へと、複数の職員を経て一つの業務が完了します。誰か一人がツールを活用しても、その前後の工程で従来の方法が維持されていれば、結局はツール外での対応を余儀なくされ、DX化の恩恵を享受できません。

また、「従来の方法の方が早かった」という回答も見逃せません。多忙を極める現場にとって、ツール操作の習得に時間を割くよりも、慣れ親しんだ紙や電話の方が「短期的には効率的」だと判断されるのは自然な流れです。特に操作が複雑で、目的の画面にたどり着くまでに時間を要するツールであれば、使い続ける動機はさらに弱まります。

つまり、逆戻りを防ぐためには、単に利用を促すだけでなく、「全職員が迷わず使える操作性」を備え、業務の流れを途切れさせない状態をつくることが不可欠です。庁内ツールの定着は、個人単位のスキルアップではなく、「業務プロセス全体のデジタル移行」として捉えることが大切です。

定着支援の限界。「説明の多さ」は、選定時点の「使いにくさ」の裏返し

庁内ツールが浸透しない際、「より丁寧な説明会」や「網羅的なマニュアル」の拡充が解決策として検討されがちです。もちろん、導入初期の理解の場は重要ですが、支援を強化すればすべて解決するというわけではありません。

今回の調査で、担当者が定着支援に費やしている工数を聞いたところ、「非常に多くの時間を割いており、本来の業務を圧迫している」が14.8%、「ある程度の時間を割いている」が60.0%という結果になりました。実に7割超の担当者が、すでに多くのリソースをマニュアル作成や説明会に投入している実態が明らかになったのです。

この結果は、定着が進まない要因が「支援の不足」にあるのではなく、「支援に頼らざるを得ない庁内ツールの難しさ」にある可能性を示唆しています。担当者が多くの時間的リソースを割いても現場に浸透しきれない現状は、もはや運用の工夫だけで解決できる範囲を超えているといえるでしょう。

自治体の情報システム担当者の本来のミッションは、より高度な業務改善やセキュリティ対応、DXの戦略策定にあるはずです。定着支援という「守り」の業務に追われ続ければ、本来行うべき「攻め」のDXに割く時間は失われていきます。

つまり、定着支援を際限なく増やす運用には限界があります。製品選びの視点を「どう教えるか」から、「説明に頼らずとも、直感的に使いこなせるか」へとシフトさせる。この「選定時点での見極め」こそが、真のDXを実現するための重要な視点の一つであると言えるでしょう。

説明しても、実務で使える状態になるとは限らない

定着支援を行っても、課題が残る場合があります。調査では、定着支援の取り組みを行った上で、なお解決できていない課題についても聞いています。

結果を見ると、「説明会に参加しても、実務で活用できていない」が46.8%で最多でした。続いて、「マニュアルを読まず、電話や窓口で直接問い合わせてくる」が40.5%、「人事異動のたびに、新たな職員への教育が必要になる」も40.5%となっています。

説明会に参加しても実務で使えない理由は、職員の理解不足だけではありません。説明会では操作方法を聞けても、実際の業務では例外対応や部署ごとの運用が発生します。マニュアルに書かれた手順と現場の状況が少しでも違えば、職員は操作に迷います。結果として、庁内ツールに詳しい職員や担当部署に問い合わせが集中します。

人事異動も大きな課題です。自治体では、定期的な異動によって担当者や承認者が変わります。せっかく説明会を行っても、異動のたびに新しい職員への教育が必要になります。調査でも、「人事異動のたびに、新たな職員への教育が必要になる」と回答した担当者は40.5%にのぼっています。

したがって、説明会やマニュアルだけに頼る定着支援では、担当者の負担が増え続けます。庁内ツールを選ぶ段階で、初めて使う職員でも迷いにくいか、問い合わせが集中しにくいか、異動後の職員にも説明しやすいかを見ておく必要があります。

庁内ツール選定では「機能の多さ」より「迷わず使えるか」が重要になる

多機能であることが、現場の負担になる場合がある

庁内ツールを選ぶ際、「機能の豊富さ」は非常にわかりやすい判断基準になります。申請・承認からチャット、連携機能まで、できることが多ければ多いほど、投資対効果(ROI)が高いように感じられるからです。

しかし、現場の職員にとっては、その「多機能さ」が逆に心理的な負担となる場合があります。調査では、現在のツール運用で負担に感じている点として、「機能が多すぎて、職員が『難しそう』と敬遠している」が37.4%で最多でした。続いて、「設定やカスタマイズが複雑で、管理側のメンテナンス負担が重い」が35.7%、「利用している機能が一部に限られ、コストに見合っていない」が33.0%となっています。

この結果から、機能を多く備えていることが、そのまま定着につながるとは限らないとわかります。職員が「難しそう」と感じれば、利用の入口で止まります。管理側の設定が複雑であれば、運用担当者に負担が集中します。さらに、実際に使う機能が一部に限られれば、費用に見合った効果も出にくくなります。

庁内ツールの選定において重視すべきは、機能数ではなく「その機能が、現場の職員にとってどれだけ直感的に使えるか」という視点なのです。

マニュアル不要の直感性が定着のカギ。「ITが苦手な職員」を置き去りにしない庁内ツール選び

今後の庁内ツール選定では、機能の多さだけでなく、画面のわかりやすさや操作のしやすさ(UI)も重視されるようになっています。

調査では、ツールの選定時に「もっと重視すべきだった」と感じる点、または今後の選定で重視したい点として、「ITが苦手な職員でも抵抗なく使えるシンプルさ」が46.1%で最多でした。続いて、「説明書がなくても直感的に操作できるUI・画面設計」が40.0%、「既存の紙・アナログ運用からスムーズに移行できる仕組み」が38.3%となっています。

さらに、今後の庁内ツールのリプレイスや新規導入を検討する際に、UI・操作性をどの程度重視するかを聞いた設問では、「機能よりもUI・操作性を最も重視する」が17.4%、「機能と同じくらいUI・操作性を重視する」が52.2%でした。合わせると、約7割が画面と操作のわかりやすさを機能と同等以上に重視しています。

この結果は、今後の庁内ツール選びの基準が変わりつつあることを示しています。

これまでは、機能数や価格、導入実績が重視されやすかったかもしれません。もちろんこれらは重要な要素ですが、職員が使い続けられなければ、どれだけ多くの機能を備えていても効果は限られます。

定着を左右するのは、機能の豊富さだけではありません。職員が迷わず使える画面設計や、操作のしやすさも機能と同等以上に重要になります。

定着率を最大化する「庁内ツール選定」4つのチェックポイント

調査結果から見えてきた課題を未然に防ぐために、ツール選定時に必ず確認しておきたい4つの観点を整理します。

1. マニュアル不要で「操作」が直感的にわかるか

導入時の不満として多かった「操作を覚える時間がない」「画面が複雑」という声を打破するには、「説明を読まずに使えるUI」が重要な要素となります。

特に、選定の際には申請・承認・掲示・予定共有といった日常業務において、初見の職員でも「次にどこを押せばいいか」が直感的に判断できるかを確認しましょう。デモの際は、理想的な操作だけでなく、「エラーや差し戻しが起きた際に、次に何をすべきか迷わないか」というイレギュラー時の分かりやすさまでチェックするのが、導入後の問い合わせを減らすコツです。

2. 周囲の職員も巻き込んだ「業務の連鎖」が維持できるか

逆戻りの最大要因は「自分だけツールを使っても、周囲が使っていないので業務が完結しない」ことでした。

選定時には、特定のITスキルの高い職員だけでなく、「全階層・全職種での使いやすさ」も重要です。起案者が使いやすくても、承認を行う管理職が操作に迷えば、結局は「紙で持ってきて」とアナログへ逆戻りします。管理職、一般職員、現場の作業員など、それぞれの立場で無理なくフローに乗れるかという「業務全体図」での確認が不可欠です。

3. 管理側の設定や変更に負担がかかりすぎないか

職員にとっての使いやすさと同時に、「管理側のメンテナンス負担」もまた、見逃せないポイントです。

調査(Q6)では、現在のツール運用で負担に感じている点として、「設定やカスタマイズが複雑で、管理側のメンテナンス負担が重い」という回答が35.7%にのぼりました。

自治体特有の定期的な人事異動や組織変更において、所属や権限、承認ルートの変更が簡単に行えるかも、スムーズな運用を左右する大きなポイントです。特定の担当者にしかわからない複雑な設定を必要とせず、管理画面もまた「直感的」であるツールを選ぶことが、運用担当者の負担軽減に繋がります。

4. 既存の業務環境と「シームレス」につながるか

庁内ツールを新しく導入する場合、既存の業務環境とシームレスにつながるかも重要です。 ツール自体が優れていても、ログインや画面の切り替えが頻発してしまうと、定着までのハードルが高くなってしまいます。

調査(Q7)でも、今後の選定で重視したい点として、「現在利用しているシステムや環境との連携性」が22.6%に挙がっています。割合だけを見ると上位項目より低いものの、庁内ツールを継続的に使うには、既存環境との接続は軽視できないポイントです。

導入後の定着を考えるなら、機能単体ではなく、日々の業務の中で自然に使えるかを確認する必要があります。

Google Workspace / Microsoft 365 を活かし、現場に寄り添う庁内ツールへ

「既存環境の活用」こそが、定着への最短ルート

庁内ツールを定着させるために必要なのは、単なる「高機能」であることだけではありません。職員が日々の業務で迷わず使えること、管理側のメンテナンス負担を最小限に抑えること、そして何より、「今ある業務環境」を最大限に活かせることです。

調査の結果、今後のツール選定において約7割の担当者が「UI・操作性を機能と同等以上に重視する」と回答しました。これは、多機能さに振り回されるのではなく、職員が無理なく使い続けられる「シンプルさ」へのニーズが高まっていることを示しています。既存の業務フローを壊さず、その延長線上で自然にデジタル化を浸透させることが、真のDXを実現するうえで有効なアプローチです。

自治体特有のニーズを補完する「rakumo」という選択肢

こうした「現場主導の定着」を実現するひとつの答えが、既存のクラウド基盤を活かしながら庁内業務に必要な機能をスマートに補完するアプローチです。

「rakumo」は、Google Workspace や Microsoft 365 上でシームレスに動作するグループウェア拡張サービスです。カレンダー、ワークフロー、掲示板など、自治体業務に欠かせない機能を、直感的なインターフェースで提供します。

詳しくはこちら
https://rakumo.com/industry/municipality/

庁内ツールは「導入のしやすさ」だけでなく「使い続けやすさ」で選ぶ

定着まで見据えたツール選定が、自治体DXを前に進める

庁内ツールは、導入して終わりではありません。調査結果からは、導入後に以前のやり方へ戻ってしまうケースや、説明会・マニュアルだけでは解決しにくい課題が見えています。

特に注目すべき点は、逆戻りの理由です。最多だったのは、「周囲の職員がツールを使っておらず、自分だけでは完結しなかった」という回答でした。庁内ツールは一人で使うものではなく、部署や役職をまたいで使われます。だからこそ、個人の使いやすさだけでなく、組織全体で同じ流れに乗れるかが重要になります。

また、定着支援にも限界があります。担当者の7割超が説明会やマニュアル作成などに一定以上の時間を割いている一方で、「説明会に参加しても実務で活用できていない」「人事異動のたびに再教育が必要になる」といった課題が残っています。

今後の庁内ツール選定では、機能や価格だけでなく、職員が迷わず使えるか、周囲の職員も同じ流れで使えるか、管理側の負担が増えすぎないか、既存の業務環境とつながるかを確認する必要があります。

自治体DXを進めるには、ツールを導入するだけでは不十分です。導入後に職員が使い続けられる状態をつくることが、業務改善の出発点になります。

調査概要
調査名称 : 自治体DXにおける庁内ツールの活用・定着に関する実態調査
調査方法 : インターネット調査
調査期間 : 2026年4月2日〜同年4月3日
有効回答 : 庁内ツール(グループウェア・ワークフロー等)を導入済みの自治体において、 DX推進や情報システム管理、ツールの導入・運用・活用に責任者または担当者として 携わっている職員115名

※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。